航空機の操縦席にいるかのように、経営状況の変化を表すすべてのデータを収集・把握してコンピュータに表示し、迅速に意思決定を行える経営手法のこと。

 経営戦略におけるコンピュータの発展の歴史は情報の統合化の歴史だとも言えます。
 
 1990年代以降の分散型のシステムやパソコンの普及により、経営にかかわるあらゆる数値情報がコンピュータに蓄積できるようになりました。例えば、倉庫の入出庫状況、生産数量、日々の受注状況や売掛金の額、見込み案件の数などです。
 
 こうした豊富な経営情報の価値は、実は経営者が情報を読み取る力にかかっています。いくらデータが豊富に蓄積されたとしても、経営者がそれを見て、直ちに異常の兆候に気づかなければ意味がないからです。
 
 そこで「コックピット経営」は、企業内システムから経営データを統合的に吸い上げて、経営者が分かりやすく情報を一覧したり分析できるシステムを用いる経営手法です。

◆効果
変化を早めに察知できる情報を集める

 例えば、家庭用AV機器に用いられる電子部品を生産するメーカーであれば、市場で消費者がどのくらい当該製品を日々購入しているのかが、最も知りたい情報でしょう。

 そこで、家電量販店の販売状況や在庫状況を表す日次データを、コンピュータ画面上で表示できれば、経営者も自社の売り上げの先行きを予測しやすくなります。

 ただし、現実には、なかなかメーカーが小売店からデータを提供してもらうのは困難なので、次善の策として別な情報をいくつか表示することもあるでしょう。例えば、完成品メーカーへの出荷待ち部品の在庫状況や、受注の内示情報を表示することが考えられます。

 あるいは、生産歩留まりが悪いハイテク部品を手がけているならば、生産効率を表す数字もそこに表示する必要があるでしょう。さらに、販売部門が報告してくるクレームの発生件数なども併せて表示することで、品質管理状況をチェックすることができます。

◆事例
商談状況を観察

 電源機器などの生産を手掛ける中堅メーカーのデンセイ・ラムダは2004年からコックピット経営のシステムを活用しています。ERP(基幹統合業務)パッケージやSFA(営業支援システム)などからデータを集約して、経営幹部が手軽に分析・グラフ表示などをできるようにしたシステムです。

 同社経営陣が特に重視して観察する情報はSFAの情報です。商談中の大型案件の数や商談段階の移り変わりを手軽に把握することで、売り上げの先行きの変化をいち早く察知し、営業部門へ適切な指示を行えるよう活用しています。