期間短縮を図るためのプロジェクト管理手法の1つ。工程表の作り方を変更し、締め切りを守る意欲を引き出す。実践にはプロジェクト目的や優先順位の明確化が必要。

 仕事を納期通りに終わらせるうえでカギを握るのはモチベーションと集中力です。

 しかしビジネスパーソンには、宿題に悩む学生と同様に、締め切りが迫るまで着手したくない心理がありがちです。また、上司から認められた納期よりも早く終了したとしても、言い出すメリットがないので前倒しの完了報告をしない心理もあります。

 さらに、複数の仕事を同時進行で掛け持ちすることを当然と考えています。そのほうが時間を有効活用している気分に浸れるからです。しかし実際は、頭の切り替えに時間がかかるので、集中力が低下して仕事が遅くなりがちです。

 TOC(制約条件の理論)の創始者であるエリヤフ・ゴールドラット博士は、そうした心理的な問題を回避できるプロジェクト管理手法を考案しました。それが、「CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)」です。

 CCPMでは、プロジェクトの優先順位を整理して、参加メンバーができるだけ1つの仕事に全力集中できるよう工程を組みます。このために経営陣は、各々のプロジェクトの目的と優先順位をきちんと明確にしなければなりません。

◆効果 早く終わらす意欲を引き出す

 さらに、各工程の締め切り設定のやり方を変えます。例えば、工程A、B、Cの期間見積もりがそれぞれ3週間だったとすれば、「厳しいが50%程度の確率でやれそう」な期間を再考します。その結果、2週間ずつに縮まったとすれば、余った3週間をまとめて「プロジェクト・バッファー」として管理します。

 プロジェクトリーダーは、各工程の担当者が2週間の締め切りを守れなくても現場を責めたりしません。全体の進ちょくがプロジェクト・バッファーにどれだけ食い込んできたかを管理します。早く終わった工程はすぐ終了宣言を出してもらい担当者を休ませるなどインセンティブを与えます。3週間のバッファーの大半を食い潰しそうになると救援を手配します。

 CCPMに準拠したプロジェクト管理ツールを手がけるビーイングの岸良裕司取締役は、このバッファーを「親方バッファー」と呼ぶよう推奨しています。こうしたやり方は実は伝統的に建築工事の現場で活躍した優秀な親方の考えと同じだからだそうです。

◆事例 工期を3割短縮

 建設会社の砂子組(北海道奈井江町)は、まずCC PMを河川の護岸工事に適用し、従来より3割ほど工期を短くすることに成功しました。

 同社ではより長期で難易度の高い工事にもCCPMを適用するため、ミーティング方法の工夫やプロジェクト管理ツールの活用なども進めています。