短かい期間に一定数を売る想定の新商品を小刻みに出し続ける商品戦略もしくはその商品のこと。商品寿命が短くなったことに対応した戦略である。

 1つの商品が長期間売れ続ける「ロングセラー」を作り出すことこそが、これまでは商品開発やマーケティングの目標であるといわれました。しかし、正反対の発想に基づいたマーケティングをしなければ、もはや売り上げ確保は難しいというコンセプトの商品戦略が注目されています。それが「ショートセラー」です。

◆効果 常に新商品を売る

 ショートセラーの戦略は、短期間で新商品を売り切り、次の新商品を矢継ぎ早に出して世代交代を次々と進めることで消費者へのアピール度を高めて市場シェアの確保を目指す戦略です。

 ショートセラーという言葉が出現した背景には、商品の短命化がこの10年で一気に加速したことがあります。例えば日経POS情報サービスの調べで、昨年1年間に発売されたスナック菓子の新商品は、10年間で約1.8倍増えて765種類です。同じく缶入りコーヒーは1995年の90種類から約2.4倍の213種類に増えました。

 こうした商品の短命化を促進した最大の要因と考えられるのはIT(情報技術)の普及です。消費者は、インターネットや携帯電話の普及により新商品情報を入手しやすくなりました。流通サイドではPOS(販売時点情報管理)システムの普及により、死に筋と判断された商品はすぐに撤去されてしまいます。

 「卵か鶏どちらが先か」という議論に陥りそうですが、メーカー側では逆にIT活用によって、消費者から飽きられる前に積極的に商品の世代交代を行う商品戦略を仕掛けやすくなった面もあります。ITを駆使した需要予測によって、勢いのある期間と販売数を予測しやすくなったからです。そうして従来より少な目に生産して「売り切れ御免」の姿勢で供給し、売り切ったらまた新商品を投入します。

 流通サイドのPOSの普及も、ショートセラー戦略を見方によっては下支えしているといえます。店舗間の売れ行きをリアルタイムに観察し、例えば赤色の服がよく売れる店があれば、赤色の服が売れ残っている店から即座にその店に移動させるといった工夫が、短期の売り切りを支援することにつながるからです。

◆事例 発売期間1カ月の商品で利益確保

 カルビーは2003年から社内で「味変わり」と呼ぶ発売期間限定のポテトチップスを毎月、市場に投入しています。コンビニエンスストア向けと食品スーパー向けに年間12品ずつ発売してきました。

 商品の短命化の流れを止めることは難しいでしょう。カルビーはショートセラーを連続的に投入することで消費者が商品に飽きて売り上げが落ち込む「谷間」を作らないという戦略に出たわけです。