インターネット上の個人が自身では在庫を持たずに、ブログなどのページでメーカーや卸が保有する商品を販売すること。顧客への商品配送もメーカーや卸が受け持つ。

 インターネット上で個人が商品を販売する方法の1つとして「ドロップシッピング」と呼ばれるビジネスモデルが注目を集めています。ドロップシッピングとは、メーカーや卸が持つ商品を、個人があたかも自分で仕入れた商品のように自分のホームページやブログの中に「陳列」して自由に「値付け」し、顧客から注文を受ける販売形態のことです。

 商品在庫は個人の手元ではなくメーカーや卸の倉庫にあるので、受注後にはメーカーや卸に出荷指示を出します。顧客への商品配送もメーカーや卸が受け持ちます。売買が成立すると、販売した個人には、自分で値付けした商品の販売価格から事前に決められた商品の仕入れ価格を引いた金額が「販売手数料」として支払われます。それが個人の利益になります。

 つまり、ドロップシッピングは、販売を担当する個人が在庫管理や梱包などの配送処理といった煩雑な作業はせずに、ネット上で手軽に商品を販売できるのが特徴なのです。個人が「店主」となって値決めして販売できる点が、企業の販売サイトにネット上の顧客を誘導して報酬を得る「アフィリエイト」とは異なります。

 ただし現実には、個人がメーカーや卸と個別に交渉して、販売許可を取り付けるのは難しいでしょう。そこで登場するのが、ドロップシッピングサービスを提供する両者の仲介業者です。商品を販売したい個人を束ね、数を持ってメーカーとの交渉に当たり、一定数の在庫を確保してもらいます。そのうえで、各個人がブログなどで商品を紹介して販売するのです。決済機能なども仲介業者が提供します。

◆効果 個人を無視できないメーカー

 どうしてメーカーや卸は、そこまでして個人に協力するのでしょうか。それは、今やブログなどの「個人メディア」が無視できない集客装置になりつつあるからです。新しい販路を開拓したり、ネット上での口コミに期待するメーカーにとって、個人のブログは大きな可能性を秘めています。ただし、販売活動までするとなれば、モラルや規制順守が、おろそかになるリスクを指摘する声もあります。例えば、健康食品で病気が治る効能をうたってしまい、薬事法に触れるケースが心配されています。

◆事例 仲介サービスが本格化

 サイバーエージェントの子会社であるストアファクトリー(東京・渋谷)は早ければ年末にも、仲介サービス「ミセつく」を開始します。既に大手メーカーからも引き合いがあり、開業までには約1万点の商品を用意する予定です。それらに興味がある個人が買い手から売り手に回ることも可能なのです。