統計学の知識を必要とする高度な情報分析をサポートする専門組織。ユーザー部門から分析を請け負ったり、分析ツールを使いこなすようユーザー部門を教育する。

 多くの企業が、顧客に関する情報や営業の進捗(ちょく)状況を把握するためにIT(情報技術)投資を積極的に行っています。ところが、蓄積されるデータをユーザー部門が分析できるBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールを導入したのに、積極的に活用されずになかなか成果が出ないことが珍しくありません。そこで登場するのがBIツールや統計学に対する深い知識を持ったスタッフをそろえて利用促進を働きかける組織「BICC(ビジネス・インテリジェンス・コンピテンシー・センター)」です。近年注目されつつあり、日本企業での設立事例も増えています。

 BICCの役割は大きく2つに分かれます。1つは複雑な分析作業を代行することです。もう1つはBIツールをユーザー部門が使いこなせるように啓蒙活動をすることです。

◆効果 分析ニーズを把握してサポート

 BICCは、分析スキルの高いスタッフさえ集めて組織を作れば直ちに効果を発揮するというものではありません。効果は、まず利用部門の分析ニーズをしっかりと把握できるかどうかにかかっています。

 BIツールがユーザー部門でなかなか活用されない場合、現場でツールそのものの知識が不足していたり、使いこなす能力や時間的な余裕がないといった事情が考えられます。あるいは、分析に必要なデータが社内のどこにあるかが分からないケースもあるでしょう。データが見つかったとしても、必要なデータ項目が複数のシステムにバラバラに保管されているのでまず整理統合しなければならなかったり、項目が不完全なデータや古すぎるデータが混じっていて分析が正確にできない障害も考えられます。

 そこで、まずBICCは社内でどのような分析ニーズがあるのかを調査する必要があります。さらにそうした分析ニーズに対して、利用部門のスキルは十分なのかどうか、また、必要なデータは十分にそろっているのかどうかといった課題も検討します。

 そうした課題を把握したうえで、BICCの具体的な活動方針を決める必要があります。

◆事例 解約率低下に効果

 NTTドコモは2001年末にBIツールを導入したものの、ほとんど使われないままでした。そこで2003年4月、情報システム部内に情報戦略担当という部隊を作りました。この部隊はシステムの企画や運用に携わらず営業や経営企画の部署から情報分析を専門的に請け負っています。ユーザー部門が立てた仮説を検証しながら顧客行動の予測モデルを作り上げることで、料金プランやダイレクトメールなどの改善につなげてきました。BICCを設置した2003年度の月間解約率は1.23%だったのが、2006年度第1四半期には同0.64%まで下げることに成功しています。