情報を決められた枠組みに従って整理する思考法。これを使うことで、ものごとの因果関係を明確に把握したり、問題の解決策を突き止めることが可能になる。論理的な説明をするための前提となる技術である。交渉やプレゼンテーションの際に活用できるので、この思考法に関心を寄せる企業が増えつつある。

 日本人は論理的な思考が苦手な民族と言われています。集団の和を重んじることが美徳とされ、自分の意見を無理に押し通すことに抵抗を感じる人が少なくありません。相手を説得する機会を日常的に持たないため、自分の考えを筋道立てて伝えることに慣れておらず、いざ何かを説明する際、とりとめもなく話をしてしまう人が意外と多いものです。

 しかし、ビジネスの世界では商談やプレゼンテーションなど、分かりやすい説明が必要になる場面が珍しくありません。そこで、情報を論理的に整理する思考法として注目されているのが「ロジカル・シンキング」です。

◆効果
情報を階層別に整理

 ロジカル・シンキングを実践する際によく使われるのが「ロジックツリー」と呼ばれる分析手法です。これは、漏れや重複がないようにたくさんの要素を階層別に列挙して、情報を整理するものです。ロジックツリーを作れば、要素の因果関係を整理できるため、論理的に説明しやすくなります。

 この手法は、現在抱えている問題を解決する方法を考える際にも役立ちます。例えば、ある企業が「自社製品のシェアが伸びない」という問題を抱えているとしましょう。この問題が起こる原因としては、「他社製品のシェア拡大」や「自社製品の魅力の低下」といったことが考えられます。他社製品がシェアを拡大している理由には「品質が良い」「低価格である」といったことが、自社製品の魅力が低下している理由には「販促が悪い」「デザインがいまひとつ」といったことがそれぞれ予想されます。こうした要素を1つずつ検証することで、何が自社製品のシェア拡大を妨げているかを把握しやすくなります。

 ロジカル・シンキングのツールには、一覧表や分布図を使って要素の違いを明確にする「マトリックス」や、要素を時系列に整理してどの部分に問題があるかを発見しやすくする「プロセス」といったものもあります。これらを使えば、様々な角度から情報を整理することが可能です。

◆課題
習得するには訓練が必要

 ロジカル・シンキングを使うためには、従来の思考法を新しいものに切り替えることが不可欠です。しかし、これにはある程度の訓練が必要です。いくらロジカル・シンキングが有効だと理解していても、従来の思考法を無意識のうちに使うことがあるからです。

 このため、ロジカル・シンキングを活用したいと考える企業は、社内研修を実施して社員がこの技術を習得する機会を設ける必要があります。社員がロジカル・シンキングを使いこなすようになれば、問題が発生しても短時間で解決できる可能性が高くなるので、研修を実施する価値は十分にあります。

長谷川博 hhasegaw@nikkeibp.co.jp