商品を単品ごとではなく、顧客価値という観点を基にカテゴリー(部門)に分け、カテゴリー全体で構成商品のライフサイクル管理を実施する手法。価格訴求商品、価値訴求商品などを巧みに組み合わせることで、全体の売り上げや利益を向上できる。小売業とメーカーや卸が情報を共有しながら、共同で取り組んでいくことが不可欠。

 そろそろ汗ばむ季節になりました。ボディシャンプーが切れたので特売チラシを見てスーパーを訪れたA子さんは、トイレタリー用品の売り場で「汗対策で爽やかに!」と書かれたコーナーに目を留めました。

 目当ての特売品に加えて夏向きの入浴剤、制汗用のスプレーやデオドラント用品、汗でも落ちない日焼け止め化粧品などを組み合わせた、清涼感あふれるディスプレイ(陳列)です。特売品だけを買って帰るつもりだったA子さんですが、結局は値の張る化粧品も数個、買い物カートに放り込んでレジに向かったのでした。

 単純に「特売」という価格だけの訴求でなく、「汗対策」というくくりでの訴求が成功したと言えるでしょう。

 このように、商品を単品としてとらえるのではなく、顧客にとっての機能や価値といった観点から複数商品をカテゴリーに分類し、カテゴリーごとの商品ライフサイクル全体を管理する手法を「カテゴリー・マネジメント」と呼んでいます。

◆効果
顧客価値に注目することで利益を最大限に

 カテゴリー・マネジメントの最大の効果は、顧客への価値を高めることで、売り上げや利益の向上が狙える点です。

 単なる価格競争から抜け出すためには、顧客に対して「買いやすさ・利便性」「役立つ情報」「楽しさ」など様々な価値を、店頭を通じて提供していく必要があります。カテゴリー・マネジメントはそのための手法と言えます。

 自分の店のカテゴリーをどのように設定し、その商品構成をどう決め、限られたスペースのなかでどう棚割りや販促を実施していくか。これは顧客を熟知していなければ不可能なことで、小売業にとって戦略レベルの課題です。さらに在庫を抑えつつ欠品も防ぎ、売り場効率を上げるためにはメーカーや卸の協力が欠かせません。

◆事例
大手量販店と花王、P&Gなどが実施

 カテゴリー・マネジメントは、戦略レベルから日々の業務レベルまでの一貫した活動であり、小売業とメーカー、卸などが互いに情報を共有し、パートナーシップを築いて初めて実現可能になると言えます。もちろん、大量のデータを迅速に処理、共有できるIT(情報技術)インフラの存在は大前提となります。

 小売業のパートナーとしては、そのカテゴリーで大きな力を持つサプライヤーが選ばれます。サプライヤー側の提案力や商品調達力が選定の基準となります。他社製品も含め、あるカテゴリー全体の商品調達を1社が引き受ける場合もよくあります。

 花王やP&Gは、大手小売業と共同で取り組んでいることで有名です。英国の大手小売業のテスコでは、同社のパートナーであるサプライヤー側も売り上げと利益がともに2ケタ増になったと言います。

秋山 知子 takiyama@nikkeibp.co.jp