親会社と100%子会社を1つの企業とみなして法人税を課税する制度。単体課税に比べて税負担が少なくなる。2002年4月から適用できる。

 ここ数年、株式の交換・移転制度や会社分割制度を活用して、事業を再編する企業が増えています。高収益部門の独立や赤字部門の整理により、経営効率を高めるのが狙いです。

 ただし、持ち株会社を設立したり、事業部門を分社化すると、企業の税負担が増える場合があります。そのため、産業界からは事業再編を促すような税制の改正が求められていました。

 連結経営に対応するために、グループ企業の損益を合算して法人税を課税する制度が「連結納税制度」です。この8月から連結納税関連法が施行され、今年4月以降に始まった事業年度にさかのぼって適用できるようになります。対象は、日本国内の親会社とその100%子会社に限ります。

 連結納税を適用するかどうかは企業が選択します。いったん選択してしまうと原則として単体課税には戻れません。

◆効果
税負担の軽減で事業再編に弾み

 連結納税を適用すれば、連結経営を取り入れた企業は税負担を圧縮できます。例えば、グループ内に1億円の黒字企業と1億円の赤字企業があった場合、両社の損益が相殺され法人税は課税されません。分社化しても一般的に企業の税負担は増えることがないため、事業再編を進めやすくなります。

 一方、連結納税制度を導入すると、政府にとっては法人税の減収につながります。そのため、穴埋め対策として、連結納税企業に課せられる「付加税」の導入や退職給与引当金の廃止などの措置を設けています。待望されていた税制ですが、付加税の導入が、企業が連結納税を採用すべきかどうか最大の焦点になっているのです。

◆事例
付加税廃止が焦点に

 付加税は連結納税を適用した企業の法人税率を、2ポイント上乗せする(プラス2%)という2年間の時限措置です。付加税が課せられると、連結納税を選択すると税負担が増える企業が出てきます。

 連結納税を適用する以前に子会社が抱えていた繰越欠損金の引き継ぎが制限されることにも注意が必要です。そのため、現段階で連結納税の採用を表明している企業は少数にとどまっています。

 大手企業では、日立製作所が2003年3月期から連結納税を適用する方針を固めています。日立は2002年3月期の連結経常利益が5860億円の赤字で、節税効果が高いと判断したようです。

 財務省は2003年3月期分の連結納税の適用申請を今年9月末に締め切り、今年度の税収見込み額を試算し直します。その結果によっては付加税の廃止が前倒しされる可能性も出てきます。

相馬 隆宏 souma@nikkeibp.co.jp