生産や販売、在庫物流、会計、人事などの経営資源を統合的に管理して効率化を図る経営手法。各業務の情報をリアルタイムに近い形で一元管理することが特徴。

 IT(情報技術)に関心がある方ならば、「ERP」というキーワードを耳にしたことがあるでしょう。そして、この言葉の意味することをご存じだという方も多いはずです。

 しかし、そんな人でも、IT経営とは関係の薄い上司や部下からこの用語の意味を尋ねられると、ちょっと戸惑ってしまうかもしれません。ERP本来の意味と、新聞や雑誌で目にするERPの意味にかい離があることが少なくないからです。

 新聞や雑誌の記事では一般に、ERPを「統合基幹業務システム」などと訳しています。しかし、より正確に表現すれば「企業資源管理」となります。

 本来は、生産や販売、在庫、購買、物流、会計、人事など様々な経営資源をリアルタイムに近い形で一元的に管理する経営手法のことで、情報システムを指す言葉ではありません。

◆効果
意思決定の精度と速度を向上

 経営手法としてのERPを導入する利点は、経営層や現場の管理者の意思決定のスピードや精度を向上させることです。特定部署の情報だけでなく、関連する情報を一元的に、それもリアルタイムで見られるようになるために、このような効果が生まれます。

 こうしたことを実現するために、ERPパッケージ・ソフトは様々な業務アプリケーション(応用ソフト)を備えています。ただし、パッケージを導入したからといって、経営手法としてのERPを実現できるわけではありません。データの入力が1カ月に1度といった状況では、意思決定の速度と精度を高められません。経営手法としてのERPを実現するためには、業務の改革にまで踏み込む必要があります。

 一方で、経営手法という側面を意識せずにERPパッケージを導入することにも利点があります。それは、大規模な情報システムを自ら作り込まずに短期間で稼働できることです。

 実際、90年代半ばから後半にかけて、ERPパッケージの導入が活発だった時期には、多くの企業がこの利点を評価していました。西暦2000年問題や新会計制度への対応で、基幹業務システムの再構築に迫られた企業が、ERPパッケージを採用したのです。

◆事例
人事考課を改革

 2000年にERPパッケージを導入した丸美屋食品工業は、システムの導入に併せて、人事考課に新たな指標を取り入れました。業務を改革するには現場にいる社員の意識改革が不可欠だと判断したためです。

 従来は、営業担当者を販売実績だけで評価していたのですが、システム導入後には販売促進費のコスト対効果を評価対象に加えました。

吉川 和宏 kyoshika@nikkeibp.co.jp