親会社単独ではなく、子会社を含めた企業グループ全体の効率化を図りながら経営する手法。グループ横断的に戦略を立案し、連結決算によって収益を管理する。

 西友や三越といった大手流通業者は、本業が回復基調でも依然として厳しい経営状態にあります。こうした企業を苦しめているのは、連結子会社を含めた巨額な有利子負債です。バブル期に展開した事業の失敗が本業を圧迫しているのです。

 会計ビッグバンの一環として2000年3月期に連結会計制度が導入されて以来、上場企業の業績はグループ全体、すなわち連結ベースで評価することになりました。こうした「連結経営」は上場企業にとって、必須条件となったのです。

◆効果
競争力を向上する

 連結経営が重視される背景には、不採算な事業の存在を隠ぺいしたり、不良在庫や損失を子会社に持たせたて、業績をよく見せかけようとした例が多かったことが関係しています。しかし、不正防止だけが連結経営の狙いではありません。グループ企業が抱えている様々な事業を整理・統合し、再構築することでグループ全体で効率化を図り、競争力を上げることまでを含んでいます。

 いわばグループ企業として、どんな事業を手がけるべきか、何を捨てて何を残すのかといった事業のポートフォリオ(経営資源の再配分)を明確にして、グループの進むべき将来像を描くことが本質といえます。親会社の経営者は、グループ全体の戦略策定と事業範囲や役割分担の見直しから、グループ企業間における経営陣の適材適所の配置までに的確な判断を求められるのです。

 こうした経営判断を支えるには、素早くグループ全体の業績を把握できる仕組みが必要です。国内外の子会社から会計データを吸い上げるには、情報化で遅れる子会社の会計システムの再構築や、経理処理や勘定科目の統一といった業務の標準化が欠かせません。こうしたグループ全体の業務改革なくして連結経営は実現しないのです。

◆事例
部門ごとの指標算出

 グループ経営の先進事例となるのは帝人です。帝人は5年前に1.2倍前後だった連単の売上高の倍率が4倍になるなど、グループ企業の占める売り上げが年々増えています。これは積極的に分社化やM&A(企業の合併・買収)を繰り返してきた結果です。

 本社の規模はできるだけ縮小し、繊維や医薬といった各カンパニーが強みを伸ばして自立できるようにしてきたのです。

 このほか、連結経営を支える会計システムで先行するのは味の素です。味の素は国内外のグループ企業約120社の会計データをインターネットで本社に素早く集約し、事業部門ごとの損益計算書や貸借対照表をはじめ、ROE(株主資本利益率)なども算出して、グループの戦略立案に生かしています。

三田真美 mmita@nikkeibp.co.jp