システムの開発・運用に加えて、業務の変革や遂行まで外部企業に委託するアウトソーシング形態。人事や営業、物流などのサービス分野で成長が見込まれている。

 アウトソーシングは日本企業にもかなり定着してきました。推進力となったのは、やはり1990年代からの資産デフレの進行でしょう。企業が投資の「選択と集中」を進めるなかで、自前で資源を抱え込むのではなく、外部資源を積極的に活用する「持たざる経営」がごく当たり前になってきました。

 最近注目されている「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」もそうした形態の1つです。人事管理システムの運用を委託すると同時に日々の人事関連業務の運用を丸ごと委託したり、新規分野の開拓営業と営業管理システムを合わせて外部に委託する、といった企業が増えているようです。

◆効果
事業展開が柔軟に

 一般に「アウトソーシング」といわれているサービスの内容を、「業務とIT(情報技術)に関する設計や改善提案」の有無、「業務とITの運用・管理」の有無によって分類してみます。

 BPOとは「業務とITの設計・改善」「業務とITの運用・管理」をともに提供するサービスだと定義できます。例えば、インターネット上で新規に製品を売りたいという場合、業務設計とシステム開発、さらに実際の販売業務の運営とシステム運用まで任せるのがBPOです。企業は自前でシステムを開発したり、人材を採用するより短時間で新規ビジネスを立ち上げられます。業務を外部に任せて、社内の人間をより戦略的な業務に振り向けることも可能です。時間やコストの制限に応じて柔軟なビジネス展開が可能になるのが利点です。

 ちなみに「業務とITの設計・改善」はするが「業務とITの運用・管理」はしないなら、いわゆるコンサルティング・サービス。「業務とITの設計・改善」はしないが「業務とITの運用・管理」は行うのが旧来型のアウトソーシング。「設計・改善」も「運用・管理」もせず、マンパワーだけ提供する形態が「人材派遣」に相当するでしょう。 

◆事例
SLAの提供も

 このように、BPOは既存のアウトソーシング・サービスよりも付加価値が高いため、大手IT企業が次々に参入しています。委託した業務の実績に応じて料金を支払ったり、SLA(サービス・レベル・アグリーメント)契約を前提とするといった付加的なサービスも増えています。

 大阪府は来年4月、新設する総務サービスセンターに総務の業務をアウトソーシングする計画です。受託企業はセンターのシステム開発・運用に加えてセンター業務の運用や管理、業務改善までを包括的に請け負うほか、サービス基準が満たせなければペナルティーを支払うといった契約形態を結んでいます。

秋山 知子 takiyama@nikkeibp.co.jp