小売りで特売を実施する代わりに、毎日低価格で商品を販売する戦略のこと。顧客には「いつ来店しても安い」という利便性と安心感を提供できる。

 米ウォルマート・ストアーズは顧客から大きな支持を集め、世界最大の小売りに成長しました。ウォルマートに行けば、いつでも他店より圧倒的に安い価格で商品を購入できる。この安心感が顧客を引きつけたのです。

 そのウォルマートが打ち出した経営戦略が「EDLP(エブリデー・ロープライス)」です。EDLPはウォルマートが顧客に掲げた公約のようなもの。どの商品も地域で一番安く販売し、しかも常にその低価格を維持することをうたっています。

 ウォルマートはEDLPの公約を守り続けるために、単品の大量仕入れを実施したり、情報システムに大規模な投資を続けてきたといえます。

 一方、他のほとんどの小売りは今でも、期間限定の特売を通じて顧客に安さをアピールしています。例えば、週末の特売を知らせるチラシを配り、目玉商品を大きく値下げして顧客を呼び込むのです。

 日にちによって価格が大きく上下することから、「ハイロー」戦略とも呼ばれています。ウォルマートは長年流通業界で続いてきたハイローを否定し、独自のEDLPを貫くことで顧客を獲得したのです。

◆効果
まとめ買いを誘発する

 EDLPは常に低価格で商品を販売するため、当面は客単価が下がり、商品1つ当たりの利益も小さくなります。

 にもかかわらず、ウォルマートが世界最大の売上高を誇る企業になれたのは、顧客のまとめ買いを誘発できたからです。「いつでも安い、何でも安い」という安心感から、顧客は迷わずウォルマートにやって来て、生活必需品を一気に買い込みます。安いと分かっていれば、値札を見ないで商品をカートに入れていく顧客も出てきます。

 こうした顧客はウォルマートへの再来店率も高く、その店舗に対するロイヤルティー(忠誠度)はどんどん上がっていきます。特に宣伝をしなくても、顧客のほうから店舗に来てくれるのです。

◆事例
国内ではイオンが展開

 ウォルマートの成功を見て、日本の小売りのなかにもEDLPを実現しようとする企業が増えてきました。最も熱心なのが国内最大手のイオンです。イオンはグループ規模の拡大で大量仕入れを実施したり、中国など海外からの調達や、日本ではなじみの薄いメーカーとの直接取引を推進して、仕入れ値を下げようとしています。

 さらに、マーチャンダイジングや在庫管理、商品発注、物流といった小売りの中核システムを全面的に見直し、コスト削減を図っています。店頭価格を下げても利益を出せる体質を作るためです。

川又 英紀 hkawamata@nikkeibp.co.jp