コンピュータを置くために設計した専用の施設。専用のビルを建設して、全体をデータセンターとして利用する場合と、ビルの一室を改装してデータセンターとして利用する場合がある。

 いずれもコンピュータを安定して連続稼働させるために、さまざまな設備を備えている。まず最も重要な電力や通信ネットワークは、複数の経路で、ケーブルを引き込んでいる。ケーブルの途中で障害が発生したり、通信事業者側の機器の障害で通信サービスが利用できなくなった場合は、瞬時に別経路へ切り替えることができる。停電になった場合は、バッテリや自家発電装置で電力を供給する。数日分の燃料を備蓄しているデータセンターもある。

 このほか、消火設備、空調設備、セキュリティを確保するための入退出管理システム、監視カメラなどを備える。最近建築されたデータセンターのなかには、建物自体の耐震性を強化し、震度7程度の地震にも耐えられるものが多い。窓を少なくして、火災が発生したときの延焼や、不正侵入を防ぐ工夫をしているデータセンターもある。

 最近、企業のメインフレームやサーバーをデータセンターに設置するケースが増えてきた。システムの信頼性やセキュリティを向上させるだけでなく、運用監視やバックアップなどの作業を委託して、手間を省くことが目的だ。データセンターが利用しやすくなった背景には、広域イーサネットやIP-VPNといった低価格で高速なネットワーク・サービスの普及がある。ネットワークが高速であれば、遠隔のデータセンターにコンピュータを設置した場合でも、自社内にコンピュータを設置してLANに接続していたときと使い勝手は変わらない。

 データセンターを利用する形態には、コンピュータの設置場所を借りる「ハウジング」、サーバーの処理能力を借りる「ホスティング」の二つがある。ハウジングは、サーバーや通信機器を格納するラックの数や、利用するネットワークの帯域、保守サービスの内容などを選択して、契約する。不動産と同様にハウジングの料金にはデータセンターがある場所の地価が影響する。郊外にあるデータセンターのほうが都市部にあるデータセンターより料金が安い。しかし実際の運用管理ではサーバーを直接操作して、アプリケーションを導入したり、設定を変更したりすることが少なくない。このため、都市部にあるデータセンターを利用するニーズが高く、多くのデータセンターが都市部に集中している。

 一方、ホスティングはデータセンター事業者などが用意したWebサーバーや電子商取引(EC)用アプリケーションなどを利用する。ホスティングは1台のサーバーを複数のユーザーで共用するタイプと、1台のサーバーを占有するタイプに大別できる。共用タイプは、データ量や機能に制限があるものの、料金は安い。

(坂口)