ソフトウエアのソース・コードを自由に入手して閲覧したり,その内容を変更したり,再配布したりできる,ソフトウエアの使用許諾条件(ラインセンス)。このライセンスに基づいたソフトウエアを,オープンソース・ソフトウエアと呼ぶ。

 オープンソースの狙いはもともと,「ソフトウエアの自由な共有」である。それが,「ソフトウエア開発の効率化」につながったことから,ソフトウエアの開発手法としても注目されている。

 オープンソース・ソフトウエアが注目され始めた1998年から2000年にかけては,十分に使えるソフトウエアを比較的安く手に入れられることから,LinuxやApache HTTP Server,Samba,sendmail,PostgreSQLなどのオープンソース・ソフトウエアの本格活用が始まった。これは主として「ソフトウエアの自由な共有」の恩恵といえる。

 本格活用が始まると同時に,Linuxの急激な進歩にみられるように,「ソフトウエアの自由な共有」を実現するための条件である,ソース・コードの公開や改変,再配布の自由などが,インターネットを介したコミュニティの形成やメンテナによる管理体制,不特定多数によるテスト環境などと相まって「ソフトウエア開発の効率化」を実現し得ることから,自社ソフトウエアの開発促進と利用拡大を狙ってオープンソース・ライセンスを適用する企業が相次いだ。この流れは現在も継続している。

 ソフトウエア開発におけるオープンソースのメリットを簡単にまとめると,「既存のオープンソース・ソフトウエアが活用できると同時に,コミュニティや不特定多数からさまざまなフィードバックが得られる」となる。

 ちなみに,オープンソース・ソフトウエアの源流は,Richard Stallman(リチャード・ストールマン)氏が提唱したフリー・ソフトウエア(Free Software)である。「ソフトウエアの自由な共有」のためにフリー・ソフトウエアが定義され,それをオープンソースを推進する非営利組織「Open Source Initiative」(OSI)がより一般的に定義し直したのが,オープンソース・ソフトウエアだ。OSIは,オープンソースの定義を「The Open Source Definition」として公開している。ちなみに,ここでいうフリーは無償ではなく,自由を意味していることを強調しておく。

 The Open Source Definitionは,「ソース・コードの入手の自由」や「ソフトウエアの再配布の自由」,「派生ソフトウエアの作成や同じライセンスでの配布の自由」などの10項目から成る。一般には,この定義に沿ったソフトウエアが,オープンソース・ソフトウエアとして認められる。単に“ソース・コードを公開した”だけでは,オープンソースとは認められない。

 オープンソース・ソフトウエアに否定的な見解もある。その根幹を成すのは,「ただで,プロフェッショナルな仕事をする人がいるかどうか」であろう。ここから,「無報酬でプログラムを開発し続けられるのか」「無償ソフトウエアなのに,企業で使えるほどの品質があるのか」「知的所有権侵害を防げるのか」などの疑問が生じる。しかしながら,オープンソース・ソフトウエアの開発体制が成熟しつつあると同時に,企業システムの構成要素としてオープンソース・ソフトウエアが受け入れられている(ITベンダーが積極的にオープンソース・ソフトウエアを扱い始めている)ことから,こうした疑問は解消されつつある。