購入金額などで顧客を階層化し、利益貢献度に応じて提供する特典を変える販促手法。上位顧客になるにつれて、手厚いサービスをすることで離反を防ぐ。

小売業では、購入金額で顧客を分類すると、一般的に上位3割の顧客で全売り上げの7割を稼ぐと言われています。それでも、これまで小売業では顧客を区別することを嫌い、平等に扱ってきました。しかし、顧客に還元する原資は限られています。そのため、大きく利益をもたらしている顧客を逃がさないために、優良顧客だけに手厚いサービスを提供する小売業が増えてきました。この考え方が、「FSP(優良顧客に照準を定めた販促や優待)」です。

◆効果
優良顧客の離反防ぐ

 FSPを実践するには、誰が大事な顧客なのかを把握する必要があります。まず、ポイントカードなど顧客を識別できるサービスを導入します。ポイントカードの発行時に、顧客の年齢や住所などの属性情報が得られます。この情報を基に、顧客が来店した際にレジでポイントカードを提示することで購入商品と顧客を結び付けます。

 この情報を分析すれば、購入金額や来店頻度で顧客を区分できます。これによって、上位顧客だけに対して、自社から離れないために様々な優待や販促が実践できるようになるのです。

 例えば、購入金額の多い顧客にポイントの付与率を高くしたり、通常のポイントとは別にボーナスポイントを付与するといった特典を提供します。利益に貢献している顧客ほど、手厚く還元できる仕組みを作るわけです。

 さらに、ポイントカードの購買履歴から上位顧客がどのようなし好なのかを推測することも可能。キオスク端末を設置し、画面上で顧客の好みに合った商品を薦めるといった方法で購買につながる可能性は高まります。

 上位の顧客層だけを分析することで、優良顧客のし好を反映した品ぞろえができます。上位顧客が何を望んで来店しているのかを理解することで、他店への流出を防げます。

◆事例
購入金額で5倍の差

 福岡県のスーパーまるまつ(本社福岡県柳川市)では、通常の買い物でたまるポイントに加えて月間の利用金額に応じてボーナスポイントを加算しています。

 ボーナスポイントは、購入金額により異なります。月間の購入金額が1万円から3万円未満の会員には、30ポイントしか付与しませんが、3万円以上購入すると150ポイントもらえます。3万円未満との差である120ポイントは、通常の買い物では2万4000円分に相当します。2万円台の顧客は、他社で買っていた商品も自社で買うようになり、優良顧客の囲い込みに役立っています。

西 雄大tnishi@nikkeibp.co.jp