既存顧客を通じて間接的に商品を訴求する販促手法。インセンティブを与えて口コミを誘発するのが一般的。インターネットの浸透で高い効果を期待できる。

 今度出たA社の化粧品、とっても肌に良いわぁ」「横浜にある『B家』っていうラーメン屋、うまいらしいよ」——。

 商品を購入するかどうか、最終的な判断の決め手は、すでにその製品やサービスを利用したことのある友人の一言だったというケースは少なくないでしょう。なんとかして商品を売り込もうとする企業の宣伝文句よりも、気心の知れた身近な人の言う事のほうが信頼が置けるものです。

 いわゆる「口コミ」を活用して売り上げを拡大する販促手法を「バイラルマーケティング」と呼びます。口コミは、ウイルスが感染するかのように急速に広まることから「バイラル(ウイルス性の)」と表されています。

 インターネットが浸透し、個人の発言が瞬時に広い範囲に伝わるようになりました。これを受けて、企業のマーケティング担当者の口コミに対する評価が高まっています。今や、ネットの掲示板に書き込まれる消費者の発言にも目を光らせています。

◆効果
低コストで高い販促効果

 商品そのものが圧倒的に優れている場合は、自然とうわさは広まります。しかし、そうした商品はなかなか開発できるものではありません。バイラルマーケティングは、商品の優劣にかかわらず意図的に口コミを発生させるように仕掛ける取り組みです。

 よく用いられるのが、既存顧客にインセンティブを与えて友人や知人を紹介してもらうという方法。新規顧客を紹介した既存顧客に金銭や景品を進呈して口コミを促します。

 こうした手法には、テレビCMやダイレクトメールに比べて販促費を抑えられる利点があります。ただし、情報を発信する範囲や期間を制御できない点が課題です。実際にどのくらい広まるかが予測しにくいため、インセンティブの設定に注意しないとかえってコストがかかることも考えられます。

◆事例
メールで口コミ

 国内最大の仮想商店街「楽天市場」を運営する楽天は、電子メールで商品を他人に薦める「楽天アフィリエイト」と呼ぶ仕組みを設けています。購入客を増やすのが狙いです。

 例えば、楽天の会員は自分の気に入った商品を、紹介文を付けて友人や知人にメールで通知することができます。紹介を受けた顧客が実際に商品を購入した場合、紹介した会員に次回の買い物に使えるポイントを特典として与えます。

 商品を紹介するメールには、商品購入のページにつながるリンクを掲載します。これをクリックしたかどうかで口コミによる効果を把握する仕組みです。

相馬 隆宏 souma@nikkeibp.co.jp