利用段階にあるソフトウエアを変更する作業のこと。障害の発生、使い勝手や機能の改善、新しい稼働環境への移行のときに、保守作業が発生する。保守の目的は従来、運用と同様に安定稼働と考えられることが多かったが、最近は機能拡張が重視されるようになっている。

 ソフトウエア保守の業務内容はJIS規格(JIS X 0161)にまとめられている。JIS規格では、ソフトウエア保守の作業を四つに分けている。(1)利用開始後、発生した問題を解決するために講じる「是正保守」、(2)障害を引き起こす原因になり得る問題を見つけ出して直す「予防保守」、(3)性能や保守性を向上させるためにソフトウエアを改良する「完全化保守」、(4)利用環境の変化に合わせてソフトウエアを修整する「適応保守」がある。

 JIS規格では、(1)と(2)を「訂正」作業、(3)と(4)は、開発段階にはなかった新たな要件を満たすような「改良」作業であると分類している。

 これら4種類の保守案件は保守プロセスで管理される。JIS規格で定められている保守プロセスは、プロセスの開始から廃棄にいたるまで、六つの作業に分かれる。

 まず(a)保守業務の計画を実行する「プロセス開始の準備」がある。修整依頼や問題発生の報告を受けて、保守案件の整理、コストの算出、保守作業計画の立案をする。この作業を進めるにあたって、修整や問題報告の受け付け手順を確立したり、ソフトウエアの現状を把握するための構成情報を管理しておく。

 次に(b)「問題把握および修正分析」に入る。修整や問題の内容を分析して、対策を講じる。ここでは修整しようとしているシステムやデータ連携をしているシステムへの影響がどれくらいの範囲に及ぶかを把握することが重要だ。修整することが妥当かどうか、要員や予算が確保されているか、目的の修整作業が既存システムにどれだけの影響を及ぼすかを把握する。その上で課題を解決するための修整作業の選択肢をいくつか用意しておく。そして運用担当者やシステム担当者などを交えて、どの選択肢で解決するかを決定する。

 決定した後はソフトウエアの修整とテストをする(c)「修正の実施」を経て、(d)「保守レビューおよび受け入れ」を実施する。(d)は、修整を承認する権限を持つ組織の担当者を含めて共同でレビューを実施、きちんと修整が行われたか、不具合がないかを確かめる。そのあと、(e)ソフトウエアやデータの変換といった作業を計画・実行・検証する「移行」、(f)寿命を迎えたシステムの「廃棄」作業がある。

 ソフトウエア保守がJIS規格になったのは、2002年11月。JIS規格の基となったのは国際標準の「ISO/ IEC14764」。1999年に国際標準としてソフトウエア保守の規格ができたのを受けて、NPO(非営利組織)であるソフトウェア・メインテナンス研究会とISOの国内委員会が共同でまとめた。

(西村)