電子的な通貨。主に小口決済に利用する。大きく分けて、インターネットだけで流通するタイプと、実店舗で利用することを想定したICカード型電子マネーの2種類がある。

 日本国内で急速に普及しつつあるのは、後者のICカード型電子マネーだ。ソニー系のビットワレットが発行する「Edy(エディ)」や、JR東日本のICカード乗車券「Suica(スイカ)」による電子マネーが代表格である。

 Edyは2001年11月のサービス開始以来、累計500万枚を発行した。コンビニエンス・ストア「am/pm」約1400店をはじめとして、レストラン・チェーンや空港の売店など9200店で利用できる。一方、電子マネー機能を搭載したSuicaの発行枚数は340万枚である。現在の利用可能店舗は、駅構内のレストランなどを中心とする570店。来年度には、ファミリーマートが関東周辺の2800店でSuicaによる決済を可能にする見込みだ。

 ICカード型電子マネーが成功を収めるには、定期券のようにユーザーが肌身離さず持ち歩くものに電子マネー機能を一体化するのが早道。将来、JR西日本のICカード乗車券「ICOCA(イコカ)」、京阪電気鉄道や阪急電鉄が8月1日に運用開始した「PiTaPa(ピタパ)」にも、電子マネー機能が搭載される可能性がある。

 携帯電話への搭載も、電子マネーの普及をいっそう加速することになりそうだ。NTTドコモは今年7月から非接触ICカード「FeliCa」を内蔵した携帯電話を出荷し始めた。これはEdyを使った支払いやチャージが可能。来年度後半からはSuicaも利用可能になる。KDDI、ボーダフォンもそれぞれ、ICカードを内蔵し、電子マネーが利用できる携帯電話の発売に向けて準備中である。

 航空会社のマイレージ・カードに電子マネーを搭載する動きも進む。全日本空輸(ANA)は昨年6月から、マイレージが1万マイルたまると1万円分のEdyの電子マネーに交換できるようにした。年内には、日本航空(JAL)のマイレージが同率でSuicaの電子マネーに交換できるようになる予定だ。

 ただし、現在の動きを単なるブームに終わらせないためには、コインを使わない決済の利便性を訴えるだけでは不十分。電子マネーの便利さを実感してもらうための手だてが必要だろう。例えば、ポイント制度による割引を組み合わせるといった方法である。

 宮城県で食品スーパーを7店舗展開するアサノは、会員カード「おさいふカード」にEdyの機能を組み込み、月ごとに利用額の1~5%をEdyのポイントとして還元している。割引分はコストとなるが、顧客が他のスーパーに流れることを防ぐ効果は大きい。すでに決済件数の4割、売上高の5割はEdyによるものだ。割引率アップを期待する顧客の駆け込み需要で、月末に売り上げが伸びるといった現象も起きているという。

(本間)