業務の流れやシステム構造といった、目に見えないものを可視化するためのシステム構築技法。記号を使って平面図(モデル)を作成する。

 モデリングは、システム構築の工程で、序盤から中盤にかけて実施する。例えば、開発者がユーザーの目的を聞き出す際や、システムの設計図を作る際に用いる。

 可視化の目的は、システムの構築にかかわるユーザーや開発者たちが、開発対象の業務やシステムに対する共通の認識を得て、問題点を洗い出すこと。また、システムの設計図は、プログラム開発や保守にも利用する。

 業務の可視化を「ビジネス・モデリング」と呼び、最近注目を集めている。ユーザーの要求を適切に分析することが、近年ますます重要かつ困難になっており、業務の可視化が分析に有効だからだ。

 モデリングによる可視化とは、情報の整理ともいえる。業務やシステムに存在する情報、情報間の関係、情報の流れを、四角や矢印といった記号を使って表現する。

 モデリングは、新しい技法ではない。昔からあるフローチャートはプログラム構造の可視化方法であり、モデリングの一つといえる。1970年代には、データの構造を可視化するためのE-R(エンティティ—リレーションシップ)図が登場した。

 フローチャートやE-R図は、モデルを記述する方法(表記法)の一つだ。前述したように表記法は、可視化の対象ごとに、さまざまなものが登場している。だが、同じE-R図でも、記号の種類や形が違うものが多くある。表記法は、会話のための言語と同じで、共通化すればコミュニケーションが容易になる。

 ここ1、2年で、オブジェクト指向の分析手法を集大成したUML(統一モデリング言語)が普及してきた。UMLはオブジェクト指向の分析手法として出てきた、さまざまな表記法を統一したもの。10種以上の表記法にまとめた。UMLはオブジェクト指向技術の標準化団体であるOMG(オブジェクト・マネジメント・グループ)が、記号の種類や意味を策定している。表記法には、クラスの構造を表すクラス図やクラスの状態遷移を表すステートチャート図などがある。

 業務をモデリングするには、業務を表現できる表記法が必要である。UMLには、ユースケース図やアクティビティ図、クラス図などがある。クラス図はシステムのモデリングにも用いる。E-R図も、クラス図と同様、業務とシステムのモデリングに使える。業務とシステムの両方で用いられる図は、システム構築の全工程で使えるため、開発の中軸になる。

 業務やシステムの全体をとらえるには、静的状態や動きなど、いくつかの面で可視化したものを総合する必要がある。静的な状態を表現するものにはクラス図やE-R図、動きを表すものにはアクティビティ図やDFD(データフロー図)などがある。モデリングは一般的に、複数の表記法を組み合わせて使う。

(島田)

本記事は日経コンピュータ2004年11月1日号に掲載したものです。
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