米ゼネラル・エレクトリックが編み出した会議・意思決定の手法。様々な職種・部門の人が課題の解決策を議論し、責任者に提案。責任者はその場で採否を宣言する。

 組織が縦割りで、協力どころか足を引っ張り合っている」「経営陣が現場の意見に耳を貸さない」─。大きな組織や長い伝統を持つ組織によくある現象です。

 1980年代後半、米ゼネラル・エレクトリック(GE)も、官僚的体質のまん延に悩まされていました。これを打破するために編み出したのが、「ワークアウト」(練習・トレーニングの意)と呼ぶ手法。部門や階層を超えて議論し、その成果を即座に実行に移す会議・意思決定のやり方です。これを駆使することで、GEは変化に対応する柔軟さを身に付け、成長を続けています。ちなみに、GEは日本の「QCサークル」などの手法を参考にしたようです。

◆効果
部門超えて風土変革

 ワークアウトのルールは簡単です。まず扱う課題を決めます。課題は「半年で間接費を3割減らす」など、短期間での改善が可能で、かつ挑戦的な内容にするのが原則。そして、その課題について全責任を持つ人(社長や役員など)を「スポンサー」として選びます。さらに、職種や部門を限定せずに、10人程度のチームのメンバーを決めます。

 その後メンバーが集まって、課題の解決策について議論します。ただし、集まっただけでは部門間で責任の押し付け合いになることも考えられます。訓練を積んだ「ファシリテーター(進行役)」を参加させ、議論を整理することが必要です。また、この議論にスポンサーは同席しません。スポンサーが「私はこう思う」と言えば、メンバーが自由に意見を言えなくなるからです。

 ここでの議論の結果、まとめた解決策をスポンサーに提案します。スポンサーはその場で「承認」か「否認」を明言します。即座に判断できない場合でも、「○○という分析の結果次第で承認する」など明確な判断を示すのが原則です。「前向きに検討する」といった、あいまいな判断は許されません。決定は即座に実行に移します。

 ワークアウトは部門や職種の壁を取り払って改革のアイデアを出し、下から上に対して実行を迫る仕組みです。硬直した組織を活性化する効果が期待できます。

◆事例
研究部門を活性化

 GEが旧・日本リースを買収して設立したGEキャピタルリーシング(東京・港)は、ワークアウトを導入。積極的に意見を言わない人が多かった社内に「言えば実現する」という意識が定着しました。GE以外でも、藤沢薬品工業は、10組織に分かれた研究所からメンバーを集めてワークアウトを実施。研究部門トップに対する提案のなかから、研究所間の連携強化策などをその場で採用しました。

(清嶋 直樹)