ユーザー企業の子会社で、主に情報システムの開発・保守・運用を手がける企業のこと。実際には親会社のIT部門の一員として、業務を遂行するケースが多い。本誌が昨年11月、東証1部・2部上場クラスの大手企業を対象に実施した調査によると、回答企業の30.6%がシステム子会社を保有し、その平均所属人数は77.5人だった。

 システム子会社の多くは、大手企業が情報システムの導入に本腰を入れ始めた1980年ごろから設立された。システム化を推進する専門要員を継続的に採用・育成するには、別会社化したほうが得策と各社は判断した。もう一つ、親会社向けの案件で培った業務知識を生かして、外販事業に乗り出せば、連結の収益力が向上するとの読みもあった。

 そこで80年代後半から90年代にかけて、大半のシステム子会社が外販事業に注力した。資本関係のない企業から開発案件を受注したり、特定業務・業種向けパッケージを開発する動きが活発になった。

 外販の動きは90年代後半に加速した。景気低迷で親会社のIT投資が減少したこともあり、外販強化による“独り立ち”を強く求められた。

 だが、外販事業は、新日鉄ソリューションズや野村総合研究所といった一部の例外を除き、あまりうまくいっていない。もともとシステム子会社は営業要員がいない上に、要員のITスキルもそれほど高くないからだ。

 親会社から出向・転籍してきた社員が多数在籍していることもあり、システム子会社のエンジニアは、ITベンダーより業務知識が豊富だ。その半面、先端ITを使いこなす能力や、プロジェクトマネジメント能力などは、ITベンダーより見劣りする傾向がある。優秀な要員は親会社向けの案件に割り当てざるを得ない、といった子会社特有の事情もある。

 このため最近は、システム子会社を外販事業から完全に撤退させる動きが起こり始めた。子会社に収益を追求させるよりも、親会社向けの案件に注力させたほうが、グループ全体としての競争力を強化できるとの判断に基づく措置である。

 オムロンの子会社であるオムロン ネットワークアプリケーションズ、カシオ計算機子会社のカシオ情報サービス、大成建設子会社の大成情報システムなどが、これに該当する。JTBの子会社であるJTB情報システムや東京海上日動火災保険の子会社、東京海上日動システムズなども、親会社の発展にITで貢献することに全精力を傾けている。

 その一方で、2000年以降、システム子会社をITベンダーに売却する親会社も続出している。情報システムの開発・保守・運用をITベンダーにアウトソーシングするのを機に、実施するケースが多い。だが、ITベンダーが経営の支配権を握ると、システム子会社の親会社に対する忠誠心は低下しやすい。

(大和田)

本記事は日経コンピュータ2005年2月21日号に掲載したものです。
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