京セラが40年以上前に始めた経営管理手法。会社を小さな組織に分けて、独立採算を徹底させる。各部門は「時間当たり採算」と呼ぶ独自指標の向上を目指す。

 グループ経営を重視する時代となり、複数の子会社に順次アメーバ経営を導入する例が増えた」(京セラコミュニケーションシステムの森田直行社長)─。組織が拡大していくと、社長が会社の隅々まで見ることが難しくなり、企業の成長を阻害しかねません。1959年に28人で京セラを立ち上げた稲盛和夫氏(現名誉会長)は、この問題に対処すべく、独自の経営管理手法を実践してきました。それが「アメーバ経営」です。社員一人ひとりの経営者意識を高める狙いがあります。

◆効果
時間当たり採算を向上

 アメーバ経営では、企業を6~7人くらいずつの小部門に分け、独立採算を徹底させます。小部門は事業活動を行う最小単位であり、これを「アメーバ」と呼びます。一般には部や課の下に複数のアメーバがぶら下がる形になります。

 アメーバは固定的ではありません。経営環境の変化に応じて、1つのアメーバを複数に分けたり、統合したりすることで、最適と考える組織体制にします。各アメーバは「時間当たり採算」という独自の管理会計の指標を競います。これは「稼いだお金−使ったお金(経費)=もうけたお金」と「もうけたお金÷使った時間=時間当たり採算」の2式で算出します。つまり、稼ぎを最大限に増やし、経費を最小限に抑え、労働時間を最短にすることで、時間当たり採算は高くなります。「時間」という要素を加味しているのは、社員に人件費を意識させるためです。

 各アメーバのリーダーは、時間当たり採算の数値目標を毎月設定します。リーダーはメンバーと一致団結して採算を最大化できるように、日々創意工夫を凝らします。目標が達成できれば、メンバーは大きな満足感を得られます。未達成で終われば、再挑戦に燃えます。これは、1カ月という短期サイクルで、数値(お金)という分かりやすい形で結果が得られるからです。

 

◆事例
サービス業も適用可能

 京セラから95年10月に分社した京セラコミュニケーションシステム(KCCS、京都・伏見)は、十数年間にわたって300社以上の企業にアメーバ経営のコンサルティングを提供しています。このうち6割は京セラと同じ製造業ですが、残りには婚礼サービスを手がけるワタベウェディングなど多様な会社が含まれます。

 KCCSは2004年度から、グループ企業にアメーバ経営のコンサルティングと情報システムをセットにした「The Amoeba」を販売し始めました。今年4月から一般企業にも提供開始。森田社長は、「まずは過去にコンサルティングを手がけた300社を中心に、年間10億円を販売したい」考えです。

(杉山 泰一)