需要予測を基に、最適なタイミング・価格で適切な顧客層に商品を販売し、利益を最大化する手法。運輸・ホテルなど、固定費が大きい業界で使われる例が多い。

 飛行機の座席を予約しようとすると、複雑な運賃表と格闘しなければなりません。搭乗日の2カ月前に予約した場合と、3週間前や1週間前、前日、当日などで、それぞれ運賃は異なります。早く予約すると、当日予約の半額以下になることもありますが、その代わり座席数限定だったり、払い戻しができなかったりという制約が付きます。

 同じ1つの座席なのに、なぜこのようなことが起きるのでしょうか。それは、航空会社が「イールドマネジメント(歩留まり管理)」を実践しているからです。これは、需要を予測して、最適なタイミング・価格で、適切な顧客層に商品・サービスを販売する手法です。これによって利益を最大化できます。

◆効果
予測を基に利益最大化

 スーパーで閉店直前に、生鮮品に「半額」のシールを張って「歩留まり」を上げるのも、一種のイールドマネジメントだといえます。この手法を特に活用しているのは、運輸業界やホテル業界です。サービスの性質上、イールドマネジメントが利益率に直結するからです。

 例えば、飛行機を1回運行するには、満席であっても乗客が少なくても、ほぼ同じ費用がかかります。空気を運ぶよりは、多少安売りしてでも人を乗せたほうがいいでしょう。

 ただし、利益を最大化するには、単に人を乗せるのではなく、直前まで予定が決まらず、かつ、多少高い運賃でも払ってくれるビジネス客を多く乗せたいところです。そこで、過去の販売実績などを基に需要予測を行い、ビジネス客では埋まりそうにない座席数を予測して、この分は観光客に早期に低価格で売ってしまいます。そして適切な数の座席を残しておき、前日や当日にビジネス客がより高い運賃で予約してくれるのを待ちます。

 イールドマネジメントの成否は、この需要予測の精度で決まります。従来は担当者の勘に頼ることが多かったようです。最近では、大量の実績データをコンピュータで分析して最適解を弾き出したり、ビジネス客や観光客といった顧客層を細分化して、それぞれの需要を予測するといった高度なやり方をとるケースが増えています。

◆事例
全日空が80億円増収

 全日本空輸は2002年に、「搭乗率」より「1便当たりの売上高」を重視するように営業戦略を転換。これに伴い、需要予測システムを導入しました。過去2年間の同路線同曜日便の搭乗者数と、予測時点の予約者数を基に、出発日の1年前から前日までの間、40回の予測を繰り返します。これによって、2005年3月末までに約80億円の増収効果を見込んでいます。

(清嶋 直樹)