電磁波によって、情報をやり取りする小型の記憶媒体。バーコードに比べて記憶容量や耐久性が優れており、流通業の商品管理などで実用化が始まっている。

 スーパーマーケットや百貨店へ行くと、ほとんどの商品にバーコードが張られています。商品管理などで活用が進んでいますが、汚れに弱かったり、大量の商品を管理する際に読み取りに手間がかかるといった課題がありました。この課題を解決するのが、「RFIDタグ」です。アパレルや物流業界などで導入が進んでおり、物流業務の効率化やマーケティングでの活用が期待されています。しかし、1枚の単価が数十円と高いため、高額商品にしか装着できず、本格導入に足踏みをしている企業も少なくありません。

◆効果
検品作業を効率化

 RFIDタグは、微弱な電波を発して読み取り機と情報をやり取りします。タグの中には、ID番号(識別子)が入っており、バーコード代わりの役割を果たします。識別子しか入っていないタイプのほかに、タグのなかに情報を書き込める方式もあります。

 実際の利用では、事前にID番号と商品の属性などをひも付けた情報をデータベースに登録します。ID番号が分かれば、その商品の色やサイズといった情報が把握できます。

 アパレル業界では、検品作業の効率化にRFIDタグを活用し始めています。百貨店などの売り場では、バーコードを利用した検品作業に大きな手間がかかっています。シャツのように折り畳まれた商品の場合、1点ずつ袋から出してバーコードを読み取らなければならないからです。RFIDタグを取り付けることで納入された商品をなぞるだけで検品が可能になります。

 さらに、物流分野に適用が期待されているのが、UHF帯の電波を使ったものです。電波の届く距離が数メートルと長いため、倉庫や港湾など広い場所で一度にコンテナを読み取るといった使い方が可能になります。

◆事例
売り逃し防ぐ

 阪急百貨店は今年4月、うめだ本店の靴売り場にRFIDタグ2万枚を導入しました。卸業者が、RFIDタグを靴に取り付けて納品しています。倉庫に読み取り機を設置し、在庫状況が店頭で即座に把握できる仕組みです。

 同店の店頭では、各商品につき1サイズしか展示せず、残りの在庫は少し離れた倉庫にあります。従来は、顧客が望むサイズの在庫状況は倉庫まで行かないと分からず、往復に5分ほどかかるため顧客を待たせてしまい効率化が必要でした。

 RFID導入後は、店員は携帯端末で店内にある倉庫に加えて、卸業者にある在庫も確認できます。これによって店員は接客に集中できるうえ、卸の在庫を確認できることで売り逃しも防げます。