利用者の位置情報を基にしたマーケティング活動。一般に、GPS(全地球測位システム)やRFIDタグなど、リアルタイムで利用者の位置を把握する技術を活用する。

 ほとんどの百貨店は、時間限定の特売であるタイムセールを実施しています。店舗内にアナウンスを流して、特定の売り場に顧客を誘導することが目的です。もし、店舗内だけでなく、近隣を歩いている消費者にタイムセールの情報が届いたとしたら、どうでしょう。集客効果は何倍にも膨れあがるかもしれません。

 この例のように、特定の場所にいる顧客に販促情報を発信する取り組みが「LBM(ロケーション・ベース・マーケティング)」です。GPS(全地球測位システム)やRFIDタグなど、利用者の位置を特定可能な技術の活用が進むのに伴って、LBMを導入する企業が登場し始めています。

◆効果
リアルタイムで販促

 同じ販促情報でも、顧客が置かれた立場によって効果は大きく異なります。例えば、傘の販促を実施する場合、雨が降っている場所にいる人と、晴れているところにいる人では、売れ行きが大きく違うでしょう。顧客の状況に応じて適切な販促情報を送れることがLBMの大きな利点です。

 ただし、従来は、リアルタイムで顧客の状況を把握するのは困難でした。店舗内といった閉じた空間だけなら情報を発信することも可能でしたが、屋外にいる顧客の場所を特定することは不可能でした。

 しかし、GPSやRFIDタグといった技術の実用化によって、この状況は改善されつつあります。特に、LBMのツールとして期待を集めているのが、GPS機能付きの携帯電話です。利用者の多くが肌身離さず持っている携帯電話から位置を把握することで、利用者の状況を正確に把握することが可能になります。

◆事例
近隣店舗のクーポン送信

 日立製作所は今年8月から、GPSによって利用者の位置を把握し、当該地域に密着した店舗情報やイベント情報、クーポンを携帯電話から利用できるサービス「地図クル」を開始しました。同社はクーポンを満載したフリーペーパーを発行するぱど(横浜市)と提携。今年度末までに東京23区およびそれを取り囲む埼玉県、東京都下、千葉県、神奈川県の周辺繁華街地域の範囲で約5000店舗規模の情報を拡充する予定です。

 一方、小田急電鉄は、顧客が改札を通過することで位置情報を把握する取り組みを展開しています。同社が2003年2月から開始した「グーパス」は、自動改札を通過した顧客の携帯電話に、電子メールで近隣の店舗の情報を送信するサービスです。

 顧客は、事前に自分が欲しい情報を登録しておきます。すると、自動改札に定期券を通過させると即座に、近隣の店舗の販促情報が届く仕組みです。