現金資産の増加を重視する経営のこと。会計上の黒字にとらわれずに現金の最大化を意思決定の基準とし、資金繰りを安定的にする。有利子負債の削減も進める。

 企業が商品を販売した場合、売掛金として債権を計上するのが普通です。しかし、営業利益は順調に伸びていたのに、取引先の倒産などで現金を回収できなくなって資金繰りに行き詰まれば、会計上は黒字なのに倒産してしまうことすらあります。

 そこでバブル崩壊以降、会計上の利益だけでなく、現金の動きを重視した経営管理を行う機運が高まりました。これが、「キャッシュフロー経営」です。さらに、2000年3月期からは投資家へ情報開示を強化するためにキャッシュフロー計算書の作成が義務付けられてもいます。

◆効果
財務を健全化

 キャッシュフロー計算書には、3種類のキャッシュフロー指標が掲載されますが、最も重視されるのが営業キャッシュフロー(営業CF)です。営業CFを増やす主な要素は、税引前当期純利益の増加、売掛金の減少、棚卸資産の削減などです。キャッシュフロー経営では、利益を伸ばすことはもちろん、売掛金の回収を強化したり、在庫削減などに努めることになります。

 キャッシュフロー計算書に記載される残り2つの指標が、資産売却や設備投資などによるキャッシュの増減を示す投資キャッシュフロー(投資CF)、および資金調達によるキャッシュの増減を示す財務キャッシュフロー(財務CF)です。

 財務の健全化を進めるケースでは、営業CFはプラス、投資CFもプラス、財務CFはマイナスというのが理想の状態です。営業CFと投資CFの合計額が最大になるよう経営をしつつ、有利子負債返済によってキャッシュが減少している状態です。

 ただし、営業CFの額を下回る規模でマイナスの投資CFを計上するのは成長に必要な投資を行っているともいえます。事業の伸び率が著しく高いベンチャー企業などは、外部から資金調達をしつつ積極的な投資を行うので営業CFと投資CFの合計額もマイナスになることがあります。

 キャッシュフロー経営を実践すべき企業とは、総資産利益率が負債利子率と同程度に鈍化した、安定成長を目指す時期の企業といえるでしょう。

◆事例
3年間で負債を4割減

 キャッシュフロー経営に取り組み中なのがコニカミノルタホールディングスです。合併前の旧コニカと旧ミノルタは2001年当時、両社合わせて4182億円の有利子負債がありました。これを2003年8月の経営統合後、2004年3月末に2680億円、2005年3月末に2463億円と減らしつつあります。2005年3月期の営業CFは557億円、投資CFはマイナス493億円で合計63億円のキャッシュを生みました。財務CFはマイナス316億円でうち149億円を借入金の返済に、112億円を社債の償還に充てています。