経営層や管理職の意思決定を支援するために会計情報を用いる考え方や経営手法。財務諸表や納税報告書の作成のために取り組む制度会計とは目的が異なる。

 IT(情報技術)の導入によって生産や販売、在庫など企業の様々な活動を、敏速に金額などの定量情報として管理できるようになりました。ERP(統合基幹業務)システムや会計ソフト、POS(販売時点情報管理)などで集められる様々なデータを基に経営陣は戦略の分析や立案を行います。「管理会計」とは、こうした経営の判断材料となる会計情報を作成する取り組みのことです。また、それを活用した経営手法を指します。

 管理会計と対を成すのが、「制度会計」です。国と地方自治体への納税額や株主への配当を割り出すために作られる財務諸表や納税申告書の作成が目的です。社会の構成員として企業が社外へ業績を報告するのが狙いですから、商法と証券取引法、法人税法に定められた形式に則って作成されます。

◆効果
B/SもP/Lも要らない会計

 制度会計はあくまで報告に主眼を置いていますから、経営層が実際の意思決定に際して使い勝手の良いものではありません。これに対して管理会計は、社外への報告ではなく、意思決定のための材料集めだと位置づけられます。すなわち、事業の真の採算を見極めるためのものです。

 具体的な違いを例に挙げると、財務諸表に記載される賃貸対照表(B/S)や損益計算書(P/L)は管理会計にはほとんど出てきません。管理会計に求められる真の採算とは異なるからです。

 一般的に情報システムなどの設備に関する減価償却において、残存価格は法人税法上で10%と認められていますが、実際には5年もたてば価値はなくなっていることも少なくありません。こうした場合、制度会計では黒字なのに管理会計では赤字という事態も起こり得ます。

 ほかの例で分かりやすいのがプロジェクトの採算管理です。制度会計の利益は同一年度に属するプロジェクトの利益を合算したものですが、これでは個々の採算が把握できません。プロジェクトは年度ごとではなく、最終的な利益が確定する貢献期間が過ぎてからではないと本当に儲(もう)かったのかの判断ができないからです。このようなプロジェクトごとの採算管理が可能なことも、管理会計の特徴です。

◆事例
日次の予測データで管理会計も

 NTTドコモでは経営陣が、「DREAMS」と呼ぶ基幹業務システムを用いて、日次のB/SやP/Lなど財務諸表を2日遅れで取得できます。ただし、このデータは将来発生する経費も予測として含むためあくまで社内のみで利用されます。このように管理会計はデータの切り口だけではなく、速報性でも制度会計とは異なる目的として使われます。