有能な人材確保のために、女性、外国人、少数民族などを受容し活用できる組織を作る人材管理手法のこと。ダイバーシティーは多様性の意。

 歴史的に日本は同質を重んじる文化であるといわれます。しかし、同質な価値観を持った集団は、意思統一を図りやすい半面、異なる意見を受け入れない閉鎖性を帯びがちです。

 これに対して、異なる文化を持つ民族や人種を排除せずに、オープンな組織や社会を作ろう、という運動が盛んなのが米国です。そうしたオープンな組織作りのための人材管理手法が「ダイバーシティーマネジメント」です。人種差別などを背景に、企業経営においても、まずはダイバーシティーマネジメントは国家主導で進められました。

 現在では、有能な人材確保のためには、人種、国籍や性別にこだわった組織作りは望ましくないという前向きな意義も徐々に浸透しつつあります。

◆効果
視点の多様化図る

 日本におけるダイバーシティーマネジメントの取り組みとしては、例えば1986年の雇用機会均等法の施行が挙げられます。有能な人材を確保するために他企業でキャリアを積んだ人を中途採用で受け入れたり、分け隔てなく女性を登用したり、外国人を採用するといった動きも、ダイバーシティーマネジメントの一環といえるでしょう。

 経営的な意味としては、問題解決や企画会議などの場面でゼロベースでの検討が可能になるといったメリットも挙げられます。様々な性格や習慣、視点を持つ人が集まることで、アイデアを豊富に備えた組織になるからです。

 ただし、異文化を持った人たちのチームが期待通りに、多様性を問題解決やざん新な商品開発に結びつけられるかどうかには、注意を払うべき点があるとの指摘もあります。人事コンサルティング会社、ピープルフォーカス・コンサルティング(東京・渋谷)の黒田由貴子社長は著書『組織開発ハンドブック』(東洋経済新報社)の中で、(1)同じ文化的背景を持つチームよりも検討や合意に時間がかかるためコミュニケーションのプロセスに工夫が必要、(2)互いの信頼関係が醸成されにくくなるので参加者には異文化への慣れが必要—といった注意点を指摘しています。

◆事例
日産が専門部署

 日本企業の課題は、まずは男女均等に教育訓練や様々な職種への挑戦の機会を与える仕組みへの見直しだといわれています。

 日産自動車は2004年10月に、女性社員の活用を主眼に「ダイバーシティデベロップメント オフィス」を設置しました。固定観念にとらわれずに個々の女性社員の適性や志向を把握したうえでの人材配置を推進することはもちろん、多様化する顧客の価値観やニーズをより的確にとらえる組織を目指そうという狙いがあります。