株主から調達した資金を効率よく使っているかどうかを示す指標。税引き後利益を株主資本で割って算出する。日本語訳は株主資本利益率。

 これまで、グループ企業や金融機関による株式の持ち合いで、株主が安定していた時代が長く続いていました。そのため、株主価値向上に重点を置かない経営者も少なくありませんでした。

 それが持ち合いを解消する動きが高まり、株式市場からの資金調達を重視せざるを得なくなってきました。株式市場から高い評価を得るには、株主に対して多くの利益を提供できるかどうかが鍵を握ります。株主の利益につながる経営を実践しているかどうかの指標が「ROE(株主資本利益率)」です。

 ROEとは、税引き後利益を株主資本で割った数値です。株主資本とは貸借対照表にある資本の部の合計です。

 ROEの上昇は、株価上昇や高配当を期待できると考えられ、投資家からの評価は高まります。逆にROEが低下すると株価の低下を招き、資金調達が困難になります。

◆効果
株主から見た投資効率が分かる

 日本経済新聞によると2004年度の上場企業(3月決算のみ、金融・新興3市場を除く)のROEの平均は7.8%でした。ランキング上位には海運や自動車関連など業績好調な業種が目立ちます。それでも欧米に比べれば低い水準にあり、海外も含めた投資家から資金調達するにはROE上昇が鍵になります。

 ROEのほかに投資効率を測る指標には、ROA(総資本利益率)やROI(投下資本利益率)があります。ROAは借入金なども含めた総資産を使って、どれだけ利益を上げているかを示す指標。当期利益や経常利益を総資産で割ったものです。

 これに対してROIは事業に対して投下した資本から生まれる利益の比率を示すものです。企業全体や、事業ごとの投資対効果の評価に利用します。企業全体のROIを算出する場合、分子の利益は「経常利益+支払利息」、分母に当たる投資は「借入金+社債発行額+株主資本」で算出します。ROEが株主にとっての効率性を重視しているのに対して、ROAやROIは企業の効率性に重点を置いています。

◆事例
ROE倍増目指す

 丸井は2009年までの中期経営計画で連結でのROEを4.5%(2004年度)から8%以上に引き上げる計画を立てています。利益重視の戦略に転換しようとしているのです。

 数字で見ると、売上高は6%増ですが、営業利益は2倍以上の伸びを見込んでいます。具体的には、小売事業では粗利率の高い自主制作売り場やプライベートブランドの拡充で、現在の粗利率39%から45%に伸ばすことを目指しています。本業を強くすることで1株当たりの利益額を上昇させて、株主価値向上を目指しています。