アップルコンピュータの「iPod」をはじめとする携帯音楽プレーヤーを対象に、インターネットを通して音声コンテンツを配信する取り組みやそれを実現する技術のこと。

 音楽やラジオ番組などの音声コンテンツの流通形態が大きく変わろうとしています。従来は、音声はCDというパッケージで、ラジオ番組は放送という形態で聴取することが一般的でした。しかし、インターネットの浸透と、アップルコンピュータの「iPod」をはじめとする携帯音楽プレーヤーの爆発的な普及によって、新たな聴取形態が定着する可能性が高まってきたのです。

 インターネットから音声コンテンツをダウンロードして、携帯音楽プレーヤーに取り込んで聴取するという形態です。音声コンテンツをこのような形態で配信する取り組み、あるいはこれを実現する技術を「ポッドキャスティング」と呼びます。

◆効果
だれでもラジオ局に

 ポッドキャスティングは、放送の意であるブロードキャスティングとiPodを組み合わせた造語です。この言葉の成り立ちが示すように、携帯音楽プレーヤーが、好きな時に好きなコンテンツを聴取できるラジオのような存在になると考えればよいでしょう。

 MP3などのデジタル音声形式で音声ファイルをウェブサイトに公開するだけで、だれでもコンテンツの提供者になれます。ただし、これだけでは、多くの利用者にその存在を知ってもらえません。そこで、コンテンツの提供者のそれぞれを、あたかもラジオ局のように管理する仕組みがあります。例えば、アップルコンピュータは、iPodに同こんするパソコンソフト「iTunes」向けに(無償でも配布)、ポッドキャスティングを提供しています。

 このほか、コンテンツの内容や公開サイトのアドレスなどの情報を伝達するための技術が標準化されつつあります。このため、企業、個人を問わずにポッドキャスティングで音声コンテンツを提供するサイトが増えつつあります。

 実際に、ポッドキャスティングを利用するには、携帯音楽プレーヤーのほかに、iTunesのように音声コンテンツをダウンロードしてプレーヤーに取り込むソフトが必要です。ただし、市販のプレーヤーのほとんどが専用ソフトを同こんしています。

 iPodの最新版が動画を取り込んで再生する機能を搭載したことを考えると、将来はポッドキャスティングが映像コンテンツにまで広がるものと見られます。

◆事例
新聞社が相次ぎ提供へ

 現在、大手の新聞社が相い次いでポッドキャスティングに乗り出しています。

 2005年10月5日に日本経済新聞社が日本の新聞社として初のポッドキャスティングを開始したのを皮切りに、同月中に読売新聞社と毎日新聞社が音声ニュースなどのポッドキャスティングを提供し始めています。