同時に進行している複数のプロジェクトを管理する手法。予算や進ちょくを管理してプロジェクト全体の遅延を防ぐ。大規模なシステム統合時に有効。

 2006年1月1日に東京三菱銀行とUFJ銀行が経営統合するといったように、企業の合併・統合が業界を問わず増えています。1つの企業になるためには、会計システムなど情報システムも短期間で統合しなければなりません。大企業同士であれば下支えしているシステムの数は膨大です。

 これまでの仕様書や設計書など成果物を後工程が引き継いで開発する「ウォーターフォール型」では間に合いません。複数のアプリケーションを同時並行に開発して期間を短縮する必要があります。複数のプロジェクトを同時並行に開発することを「プログラム・マネジメント」といいます。

◆効果
開発の遅延を防ぐ

 稼働させなければならない期日を守るためには、予算や各プロジェクトの進ちょく状況を把握することが欠かせません。そのために、定期的に各プロジェクトの責任者が集まって進ちょく状況を報告します。報告を受けた最高責任者(プログラム・マネジャー)は、それぞれが進めている統合作業やテストが予定通りできるのかといった進ちょく状況や、予算通りに進んでいるかを確認します。遅れているプロジェクトには人員を投入するなどの決断を下し、プロジェクト全体の遅延を防ぎます。

 ウォーターフォール型の開発は成果物で後工程へ引き継ぎをしていたので、成果物がいまどこまで進んでいるかで時間管理ができました。同時並行で進むプログラム・マネジメントの場合は、情報共有する場が必要となるのです。

◆事例
共通のテンプレートで管理

 2005年4月に山之内製薬と藤沢製薬が経営統合したアステラス製薬は、システム統合にプログラム・マネジメントの考え方を採用しました。両社のCIO(情報戦略統括役員)であった岸功・常務執行役員情報システム本部長と重富俊二・情報システム企画部長がプログラム・マネジャーとなり、財務や在庫システムなど50の統合プロジェクトをまとめました。

 アステラス製薬における特徴は、50のプロジェクトで共通の管理手法を採用したことです。それぞれのプロジェクトが、予算や進ちょく状況などを書き込むことで、時間や予算の概念の統一を図りました。

 2週間に1度、すべてのプロジェクトを一元管理するスケジュール表を基に、進ちょく確認のためのミーティングを開きました。ほかのシステムにも影響するプロジェクトの遅れには、人員を増やすといった対策をとりました。

 この結果、予定通りにプロジェクトをまたいだ統合作業やテストが進むのかがひと目で分かりました。大きな遅れもなく統合作業は終了し、無事稼働にこぎつけました。