関係会社間において、金融機関に対する複数の資金移動を合算・相殺して手数料を削減したり、取引銀行を1つに絞る財務手法。金利や手数料が軽減できる。

 連結経営の強化」や「グループ戦略の重視」という言葉を経営陣が口にするとき、具体的な方法の1つとして「CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)」が頭にあるのは間違いないでしょう。

 CMSは、企業グループ内の子会社や事業所、工場などがそれぞれ銀行口座に保有していた預金を集約して、同じ取引先に支払う際の振込手数料を削減したり、銀行の口座を統一してスケールメリットによって金利を下げてもらうなどの財務戦略です。

 もともとは、銀行側が顧客の囲い込みを目指してサービスとして展開していたものです。銀行が同様の機能を顧客企業に提供する場合、キャッシュ・マネジメント・サービスと呼びますが、最近はCMSのシステムをIT(情報技術)ベンダーやコンサルティング会社が手がけることが多くなっています。

 各子会社や事業部に存在していた支払いや入金確認、資金管理などの財務業務を集約するという意味では、シェアードサービスの一種といえます。CMSの仕組みはITに頼るため少なからぬ投資も必要です。

◆効果
定性的な効果も生まれる

 

 口座を集約する子会社や事業所の数が多いほど効果が大きくなるので、2000年ごろは大企業にしか導入されていませんでした。しかし、最近ではCMS導入に必要なパッケージソフトも普及しつつあり、中堅企業が導入するケースも珍しくありません。

 CMSの基本的な機能は、各事業所がばらばらに管理してあった運転資金の「プーリング」、取引先への「支払いや入金の確認」、債権・債務の「ネッティング」(相殺)です。もっとも導入した企業でも、すべての機能を実現しているわけではありません。

 導入しやすいのはプーリングでしょう。必要に応じて本社の財務部が運転資金を供給することで各子会社は資金を調達したり、管理する必要がなくなります。支払いや入金の代行も本社が行うようになれば、さらに定量的な効果が生まれます。

 定性的な効果も考えられます。財務は長年の経験や知識が求められる業務です。団塊世代が退職し始める「2007年問題」では財務のエキスパートも人手不足が予想されます。財務機能を集約することで省人化が進めば、スムーズに対応できるはずです。

◆事例
300億円の借入金を圧縮

 神戸製鋼所では財務部内に子会社を設立してCMSに取り組んできました。プーリング、支払い代行およびネッティングを段階的に導入しています。同社ではCMS導入によって借入金を3年間で300億円圧縮しました。手数料は年間1億円、金利負担は同2億円も減っています。