光学ガラス大手のHOYAグループは、2011年からERP(統合基幹業務システム)パッケージのグローバルな統合を進めている。ERPを導入する際に、自社の業務に合わせて多くの機能をアドオン開発するケースは多いが、同グループは、あらかじめ作成したテンプレートを徹底的に活用することで、アドオン開発を最小限に抑え、導入コストの大幅な削減に成功した。

それぞれの事業部門がERPをバラバラに導入していた

 HOYAの創立以来の基本方針は、市場規模(池)は大きくなくても、それぞれの市場で大きなシェアを確保する(大きな魚となる)ことで高い収益性を実現するというもの。この方針に沿って、HOYAグループの13の事業部門(SBU)は、それぞれが独立してビジネスを展開しており、業績責任も各事業部門が負っている。

 各事業部門の独立性が非常に高いため、ITについてもこれまでは各事業部門が個別に導入していた。しかし事業部門がバラバラにITの導入を進めると、グループ全体としては、コストの最適化ができない、グローバルにいつどこで何がどれだけ売れたのかを把握しにくい、運用保守要員の属人化が進む---といった様々な弊害がある。

 そこで、HOYAグループでは、2010年に「Gr.IT最適化プロジェクト」を立ち上げ、インフラやアプリケーション、データセンターのグローバルな統合に着手した。プロジェクトを推進しているのは、グループ全体の司令塔であるコーポレート企画室。ERPパッケージの統合は、この取り組みの一環だ。

 実はHOYAグループは、1996年からグローバルな標準ERPパッケージとしてSAPを利用しているが、利用しているのは会計モジュールに限られており、それ以外のERPパッケージについては各事業部門がバラバラに導入していた。この方針を改め、「会計以外のERPパッケージは一つの製品に統一し、SAPの会計モジュールとつなげる仕組みを構築することにした」(コーポレート企画室の近安 理夫 HOYAグループ情報システム統括責任者)。