「キャリアシート」と呼ぶ透明ファイルに精算レシートを挟んで両面を読み取る
「キャリアシート」と呼ぶ透明ファイルに精算レシートを挟んで両面を読み取る
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 東海3県で駅ビルの「アスティ」など12の商業施設の管理・運営を手掛ける名古屋ステーション開発(名古屋市)は、2013年9月から入居テナントの日次売上照合業務にOCR(光学的読み取り装置)を導入した。社員の手作業に頼っていた業務を自動化し、作業時間を短縮する。富士通マーケティングが提供する「GLOVIA smart きらら OCR」を導入した。

 同社はJR名古屋駅の「キュイジーヌマルシェ 驛(えき)」「名古屋驛麺通り」のほか、「アスティ一宮」「アスティ三河安城」など、様々な商業施設を運営しており、入居するテナント数は約200店に及ぶ。

毎日200枚の精算レシートを目視で確認

 200店のテナントでは、毎日の営業終了後の締め処理として、名古屋ステーション開発が運用する「テナント管理システム」に、専用端末から総売上データを入力する。一方で、各店舗が運用するPOSシステムから、総売上や客数などが印字された「精算レシート(「Zレシート」とも呼ばれる)」を出力する。それらを名古屋ステーション開発の契約業者が回収し、同社に届けている。双方のデータを照合して各店舗の正確な売上高を把握し、テナント料を算出する。

 名古屋ステーション開発では毎日、約200枚の精算レシートと、テナント管理システムに入力された金額を目視で照合し、入力ミスなどを修正し、日次の売上高を確定する。現状では4人の社員がかかりきりでこの業務に当たっており、同社営業部管理課担当課長の宮澤幸彦氏は「繁忙期や数日分の精算レシートが貯まる連休明けなどは、就業時間中に終わらせるのも難しいほど」と話す。

 しかも、テナント各社はそれぞれ異なるPOSシステムを使っており、精算レシートも、用紙サイズから印字位置、書式、項目分類に至るまでばらばら。そこから目的の数字をスムーズに見つけて照合できるようになるには、半年ほどの経験が必要という。「ここは商業デベロッパーの多くが頭を悩ませている業務。システム化できるとは思っていなかった」と宮澤氏。

 展示会で富士通マーケティングのデモを見たことを契機に、システム化の可能性を検討し始めた。2013年9月には、まず30店を対象に、富士通マーケティング製のOCRシステム「GLOVIA smart きらら OCR」による自動読み取りと照合を開始した。

 「GLOVIA smart きらら OCR」では、「キャリアシート」と呼ぶA4サイズの透明なファイルに、テナント名などの管理データを印字した台紙と精算レシートを挟んだ状態で、両面をスキャナーで読み込む(写真)。精算レシートは、買い物客に渡すレシートと同じ用紙に印刷されるため細長い形をしており、時にはA4サイズに入り切らないこともある。その場合は折り返した状態でキャリアシートに挟み、両面を読み込むと、自動的に1枚のレシートのイメージ画像として取り込まれる。

 同時に、OCRで認識した数値データも記録される。FJMは各テナントの精算レシートについて、どこの数字をピックアップして、テナント管理システムのどの数字と比較しているのかを、担当者にヒアリングし、設定情報として登録した。この設定情報の変更は、エクセルを操作できるスキルがあれば簡単に行えるという。

メッセージが出たときだけ目視で確認

 数値に不一致があった場合などは、画面にメッセージが出る。担当者はその場合のみOCRで読み取ったデータを目視で確認し、修正などの措置を取ればよくない。約2週間使ったところ、「照合作業だけなら工数は従来の半分になった。キャリアシートに挟み込む手間なども含めて比較しても3分の2になった」(宮澤氏)という成果が確認できたという。

 同社は今後、他のテナントにも自動照合の仕組みを適用していく。宮澤氏は「精算レシートによって、読み取り時にエラーが出にくいものと出やすいものがある。読み取りやすい精算レシートを使っているテナントから順次適用し、2013年度中に50店ほどに広げる」と話す。最終的には全店舗の半数程度をカバーしたい考えだ。

 「GLOVIA smart きらら OCR」の基本価格は150万円。これに、テナントのPOSシステムの台数に応じたライセンス価格(30台で27万円、100台で70万円、など)が加わる。