写真●民権企業の中澤春彦氏
写真●民権企業の中澤春彦氏
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 「赤坂四川飯店」などのブランドで、中国料理店14店舗を運営する民権企業(東京・千代田)は、2012年7月から販売管理クラウドの利用を開始した。主力4店舗の販売実績や収支に関するデータを一元管理し、本社でデータ分析を実施している。

 赤坂四川飯店は料理家の陳建民氏が1970年に出店。麻婆豆腐などが人気を集め、2代目オーナーシェフの陳建一氏とともにメディアでも多く取り上げられてきた有名店だ。

 各店舗の販売データや原価率を管理するため、日立システムズが提供する飲食業向けのクラウドサービス「ビストロメイト」を導入。各店舗に設置するPOSシステムと連動させ、売り上げデータを自動収集する。

 データ活用・分析面でのクラウド導入の狙いは2つ。1つは新メニューの“人気”の把握だ。販売データを基に、ABC分析を行うことで、新商品や売り出したい商品が実際に顧客に受け入れられたかどうかを確かめる。

 この確認で売り上げが伸び悩むメニューがある場合は「訴求ポイントや価格の見直しといった対策をすぐに講じることができる」と、民権企業で店舗管理を担当している中澤春彦氏は話す。

原価率は味のバロメーター

 2つ目は味の維持。原価率の実績データを取得し、あらかじめ設定した基準値から外れていないかをチェックする。

 特に中澤氏が注意を払っているのが、実績が基準値を下回るケース。「料理長が食材のコストを抑えて料理を提供するなど、利に走っている可能性がある」(中澤氏)からだ。

 本場の味を楽しみに来店する常連客は少なくない。ところがコストを抑えた料理は味に変化をもたらす。その変化がわずかでも、常連客に「楽しみにしていた味とは違う」と気付かれてしまうと、楽しみをそぐ恐れがある。

 実績が基準値を下回るケースで、中澤氏は現場に出向いて料理長に確認。実際に低コストで提供しようとしている場合には、「顧客に本場の味を提供して喜んでいただく。それを最優先にして、コストはかけるべきところにかけてほしい。利益はそれを実現した上で得られれば良いととらえてもらいたい」といった方針のすり合わせをするという。

 原価率を管理指標にとどめるのではなく、「本場の味のバロメーター」にも使う。高級料理店としてカスタマー・エクスペリエンスを高く維持するための工夫が光る。