写真●大連での開所式の様子
写真●大連での開所式の様子
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 東燃ゼネラル石油は2013年3月に、グループの人事や経理、支払い業務の一部を日本IBMに委託した。タイ・バンコクから中国・大連に業務を移管するという、日本企業のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)としては珍しいケース。にもかかわらず、およそ半年で移管を終えた(写真)

 2013年1月に人事と支払い、経理の一部、3月に残りの経理業務をバンコクから大連に移管した(関連記事)。これまではバンコクにある米エクソンモービルグループの拠点に一連の業務を任せていたが、これを大連にあるIBMの拠点に移した。

 なぜ半年で移管を終えられたのか。それは「日本からバンコクにあるエクソンモービルの拠点に時間をかけて業務を移していたため」と、販売や管理統括機能を担うEMGマーケティング(東京・港)の松延真一経理統括部プロジェクト・コーディネーターは話す。既に業務を切り分け、外部に任せていた経験が生きた。

 業務を移管するうえで苦労した点は大きく2つ。1つは言葉の問題だ。バンコクには日本語、もしくは英語で業務をしている担当者がいた。しかもレベルにはバラつきがあったため、単純にバンコクのやり方をそのまま大連でも、というわけにはいかなかった。そこで、英語の業務を日本語に翻訳せずに、そのまま大連に引き継いだり、日本語でやり取りしていたものでも、言い回しを変えたりした。

 もう1つは人の行き来の問題。特にビザの発給・取得では、手続きにかかる時間を十分に取っていても、ギリギリになったり、遅れたりするケースがあったという。そうした事態に対応するため、フィリピンにいるIBMの担当者がバンコクで業務を一旦引き継ぎ、そのうえで大連に移管するという手順を採ったりした。

 また業務移管を手掛けた時期は、大連では氷点下、バンコクは30度を超すというように、気温差が激しかった。このため、担当者の健康管理にも十分に配慮する必要があった。こうした部分は些細なことのようにも思えるが、「スケジュールに大きな影響を及ぼした」と松延プロジェクト・コーディネーターは語る。

辞書の調べ方を教える

 バンコクから大連に業務を移管するにあたっては、「基本的なアプローチの仕方を引き継ぐ」(松延プロジェクト・コーディネーター)方針も徹底した。例えば、漢字の意味が分からなければ、答えを教えるのではなく、辞書の調べ方を教えるという具合だ。

 大連には定型の業務だけでなく、その時々で判断が必要になる給与計算や福利厚生に関するものも移管した。これらはすべてをマニュアル化することはできない。だからこそ、事前に起こりうるケースをFAQ(よくある質問と回答)としてまとめたうえで、担当者が自力で答えを導き出せるように教育をしたわけだ。