写真●中正雄一グローバルキッズ社長(左)と宇田川三郎執行役員総務部長
写真●中正雄一グローバルキッズ社長(左)と宇田川三郎執行役員総務部長
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 東京都や横浜市で認可・認証保育園などグループで50拠点を運営するグローバルキッズ(東京・千代田)は、給与や人事管理などのシステムをクラウド化した。2012年4月から運用を始めた。

 システムは、ピー・シー・エーの「PCAクラウド」やクロノス(東京・新宿)の就業管理システムを組み合わせた。各保育園に設置されたICカード型タイムレコーダーから現場スタッフの出退勤データを収集。年間10拠点ずつ保育園を増やしているという急成長を支え、運営の効率化を目指すシステムを構築したという。

 待機児童の多さが社会問題化している保育園は、これまで社会福祉法人などが運営の中心主体だった。2000年に認可保育所の設置主体の制限が撤廃され、自治体によっては国の基準を満たす認可保育園や東京都独自の認証保育園でも、株式会社の参入が相次いでいる。

 グローバルキッズは2006年に、パンや洋菓子などの製造販売を手がける神戸屋(大阪市)の店舗開拓を担当していた中正雄一社長が起業。待機児童の解消を急ぐ自治体に対し、中正社長が独自の目利きで待機児童の多い場所に物件を確保して自治体の許可を受けてきた。年間10拠点ずつという急ピッチで保育園を増やしている。

 そのため従業員数は2012年に300人ほどから450人に増え、2013年6月時点で860人を超える。1年間ほどかけてシステムを選び、最終的に「クラウドであれば自分たちの成長に合わせて大きくしていける」(宇田川三郎執行役員)と判断した。

複雑な勤怠管理の自動化目指す

 保育園の人事管理は、通常の企業とは大きく異なる。自治体ごとに子どもの人数や年齢に応じて最低基準の保育士など現場スタッフ数が決められているうえ、子どもを預かる勤務時間も15分単位で、地域や拠点の事情に応じて異なる。

 しかも保育園は運営上、園児が早く帰宅して誰も残っていなければ、スタッフは早帰りする。8時間勤務が基本の正社員の職員でも勤務シフトパターンが複雑で、パートは3時間や6時間勤務などもある。こうした条件処理ができなければ、タイムカードに打刻された時間が早退したと誤った処理をしかねない。

 ベンダーにシステム構築を依頼したグローバルキッズは2011年10月に、施設長と呼ばれる保育園長や総務部門を交えたプロジェクトチームを発足。まずスタッフのシフトパターンを調べた。

 すると、1つの保育園で13~14件、全体で700パターン近くもあることが分かった。そこでシフトパターンを洗い直し、全社統一の就業規則を整備。給与支払いは月末締めの翌月10日払いのため、銀行振り込み指示の実質作業日が3~4日でもできるよう自動化を目指した。

 従来は、総務部門がスタンドアロンのパソコンによる給与支払いや事務処理に追われ、年末年始の休日も出勤していた。だがクラウド化で迅速に処理できるようになった。給与明細も紙からメール配信に変えて作業量が大幅に削減。運用開始の当初は戸惑う施設長もいたが、現在はレクチャーの内容を改善して処理がスムーズになったという。

効率的な人員配置も

 グローバルキッズはクラウド化によって各保育園がどんな勤務シフトを組んで運営しているか一目で分かるようになった。今後は運営の効率化を目指すという。

 2013年10月から保育士ら現場スタッフの人事評価制度を導入。システムで園児の登園を管理したり、スタッフが自己評価できるようにしたりする。さらに、人事管理ソフトを充実させて自治体が求める最低基準のスタッフ数であっても、質の高い保育が提供できる研修の管理や機動的な人員配置も進めたいという。

 中正社長は「園児1人1人の個性を引き出しながら成長させられるように幼稚園も併設する幼保一体はもちろん、今後は小中高や大学の運営までやるのが夢」と語る。これまで運営の効率化とはほぼ無縁だった業界に、変革をもたらすことになりそうだ。