写真1●披露宴会場の中に入れないときはiPadのコンテンツで確認
写真1●披露宴会場の中に入れないときはiPadのコンテンツで確認
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写真2●結婚式場の高精細コンテンツ。同一画面で場所も確認できる
写真2●結婚式場の高精細コンテンツ。同一画面で場所も確認できる
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 結婚式場選びのために訪れたカップル。ウエディングコーディネーターの案内で披露宴会場の扉の前まで来たものの、あいにく別の催し物の最中。するとすぐさまコーディネーターがiPadで何かコンテンツを2人に提示。2人はそのコンテンツを、画面操作で確認し始める──。

 東京・新宿の高級ホテル、ハイアット リージェンシー 東京の宴会場フロアでは、こんな光景を見かけるようになった(写真1)。

 コーディネーターが示しカップルが確認しているのは、宴会場のイメージを画像にまとめた高精細コンテンツ。式場の中の様子を中継するわけではないが、披露宴を始められる状態にセッティングしてある会場の様子をまとめた高精細のパノラマ写真画像だ。

 スクロールしたり、iPadを傾けたりすることで、上下左右に360度、宴会場内の様子を確認できる。表示中の披露宴会場がホテルのどの位置にあるのかも必要に応じて、一目で分かるようになっている(写真2)。

会場を見られなくても好印象持ってもらう

 このコンテンツを、2012年10月から披露宴会場選びにやってきたカップルに提供し始めている。Webや雑誌の情報をもとにホテルを訪れたカップルに、より明確なイメージの把握をしてもらうことを狙う。

 提供開始以来、豪華な披露宴の雰囲気がつかめるとカップルには好評だ。冒頭のケースのように、これと決めた会場に入って見ることができなくても、iPadでコンテンツを確認できる。これにより「実際に内部を確認できる日に再訪していただけるケースが増えた」と、ハイアット リージェンシー 東京の野崎かおり 宴会部 ブライダル課 マネジャーは話す。カップルのほとんどは、披露宴会場の内部を実際に確認してから正式に予約することが多い。再訪の増加は機会損失を減らしていることを意味する。

高精細コンテンツは、10カ所の披露宴会場や挙式場ごとに用意した。カップルがブライダルサロンで披露宴会場を選ぶときや、実際に披露宴会場を確認し終えた後で細部を確認したくなったときなどに、このコンテンツが役立っているという。

 コンテンツは、アマナが提供するパノラマコンテンツの撮影サービス「パノウォーク」を使って作成した。「バーチャルリアリティを使ったコンテンツでも表現はできるが、パノラマコンテンツの方が披露宴会場の豪華な雰囲気をそのまま伝えるには最適」と、アマナの山形康弘電子カタログ事業部事業開発室室長は話す。

 撮影は、2012年8月に開催したブライダルフェアで、セッティング済みの披露宴会場で行った。主賓の席から撮影し、高精細のパノラマコンテンツを作った。主賓の席から撮影したのは、新郎・新婦が最も気にするのが「主賓からどう会場が見渡せるか」だからだ。

整備済みのiPad活用基盤ですぐに現場活用

 撮影日から2週間で完成したコンテンツは、現場で導入済みだったiPadからすぐに利用できた。というのも、すでにハイアット リージェンシー 東京では、iPadを業務利用するための基盤が整えられていたからだ。

 具体的にはコンテンツの提供基盤として、インフォテリアが提供するファイル共有・配信サービス「Handbook」を採用。パノラマコンテンツもこのHandbookを使うことで、すぐにiPadから利用できるようにした。

 ネットワークの基盤として、ホテル内に無線LANアクセスポイントを設置済みだ。構築コストを抑えるため同一ルーターを宿泊客用と業務用の2種類のネットワークを兼ねる。業務用はステルスモードにして、宿泊客が持つ端末から自動検出できないようにしてある。

 井上義孝総務部情報システム支配人は「iPadは業務でも個人にとっては使いやすい端末。しかし何の仕組みもなく複数台を管理するのは大変。そこで各部門が業務ですぐに使えるよう、基盤を整備してきた」と明かす。