写真1●リニューアルしたミダスのオフィス
写真1●リニューアルしたミダスのオフィス
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●1人当たりの執務スペース。コンセントは手元に設置
写真2●1人当たりの執務スペース。コンセントは手元に設置
[画像のクリックで拡大表示]

 企業オフィスのデザインやコンサルティングを手掛けるミダス(東京・中央)は2013年1月、自社オフィスをリニューアルした(写真1)。それまで各社員に用意していたつい立て付きの事務机を撤去。代わり20人ほどが執務できる大きなロングテーブルを配置した。

 ロングテーブルの材質は環境を考えて、杉の間伐材を選んだ。オフィスが明るくなるだけでなく香りも漂い、落ち着いた雰囲気で仕事を進められる。

 ロングテーブルの配置に合わせて、それまで社員が使っていた固定電話機を、iPhone 5に切り替えた。社員に配布したiPhone 5には、内線電話として利用できるエス・アンド・アイ(東京・中央)のアプリ、uniConnectを搭載してある。

 このアプリを使うことで、会社の固定電話番号にかかってくる電話を、社内外問わずスマートフォンで取ることができる。固定電話機にある保留や転送、ピックアップといった機能も備える。

 固定電話をなくしたのに加えて、外出先からのインターネット接続用に社員に配布していたWiFiルーターもなくした。iPhone 5が備えるテザリング機能が利用できるからだ。

 つまりミダスでは、固定電話と外出先の通信手段をスマホに集約させたわけだ。こうすることで「通信費は従来に比べて40%削減できそうだ」と、同社で社内オフィスのリニューアルプロジェクトを担当した小松健悦プロジェクトマネジメントグループPMデパートメント 部長は見通しを語る。

コミュニケーションを自然発生させるために採用

 内線電話をiPhone 5に切り替えたのは、社員の席を固定しないフリーアドレスを実現するためだ。フリーアドレスにしてからは、社員が毎日異なる席に座るよう社内ルールを設けた。これにより、一緒に仕事をしていない社員同士間のコミュニケーションを促す。

 ミダスで経営企画とマーケティングを統括する池田美也子取締役によると、ここ最近のオフィス関連プロジェクトでは、課題にすぐ対応することが求められているという。そのためにはプロジェクトに関わっていない他の社員のノウハウも活用しなければならない。

 池田取締役は「自然発生的にコミュニケーションが起こる場づくりが重要」と話す。大きなロングテーブルを配置したのはオフィス内で社員同士がコミュニケーションを取りやすいようにするためだ。

 電話に加えて、社員のPCも、社内で持ち運びがしやすいようにデスクトップ型からノート型に切り替えた。「PCの性能が上がっているので、業務で使うCADソフトも問題なく動くと判断して切り替えた」(小松部長)という。

 ただオフィスの設計図などを表示させるにはノートPCの画面では小さすぎる。そこでオフィスのロングテーブルに座席数分、大型ディスプレイを配置。さらにノートPCの電源を取りやすいように、座席についた社員の手元にコンセントを設置した(写真2)

海外出張中にも顧客からの問い合わせに応対

 内線電話アプリを搭載したiPhone 5を使うことで、社員同士だけでなく、社員と顧客の間をつながりやすくする効果が出ている。

 顧客に対して公開している電話番号は、携帯電話のものではなく、固定電話の番号にしている。それでも顧客がその番号にかけた電話は、社員が持つiPhone 5につながる。「仕事の電話とはいえ、携帯電話にかけるのは気兼ねしがち。そんな顧客の心理的な抵抗感をなくす」(池田取締役)ことを狙った。

 実際、池田取締役が香港に出張中、顧客が会社の固定電話の番号にかけてきた電話を、社内にいるときのように取って応対できた。「その電話で、香港にいることを顧客に伝えたところとても驚いた様子だった」と池田取締役は振り返る。