カーセブンディベロプメントのスマートフォンを使った中古車査定システム「インスマートシステム」の利用風景。国内220社、1200人が活用しているという
カーセブンディベロプメントのスマートフォンを使った中古車査定システム「インスマートシステム」の利用風景。国内220社、1200人が活用しているという
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 中古車の買い取り・販売店「カーセブン」を展開するカーセブンディベロプメントは2013年3月、スマートフォンを活用した情報システムをてこに事業の海外展開を図る。同社は、海外の中古車事業者に対し、独自開発した中古車査定システム「インスマートシステム」の利用を呼びかけ、カーセブンの店舗などで買い取ったクルマの転売先を海外に拡大する。

 海外の中古車事業者からシステム利用料金や中古車の輸出代理手数料を徴収し、新たな収益源にする。同社の本格的な海外事業展開はこれが初めて。

 2011年6月に稼働させたインスマートシステムの利用企業は、現在220社。カーセブンのFC(フランチャイズチェーン)加盟店50社のほか、国内の新車ディーラーや自動車整備会社、自動車解体事業者など170社がインスマートシステムで中古車査定業務を進めている。カーセブンは、インスマートシステムの利用範囲の拡大で、大量の中古車がカーセブンに集まる仕組みを構築し、「脱オークション」の経営戦略を推進中だ。

 今回の取り組みの狙いは、国内で買い取った中古車の転売先を海外まで広げて、売れ残りそうな中古車の販売力を高めることだ。「日本では売れ残りそうなあまり程度の良くない中古車でも、新興国などではニーズが高いものがある。それを確実に海外で売り切れるようにして、在庫リスクを減らしつつ収益源を増やす」(カーセブンディベロプメントの飯塚誉規コーポレートマネジメント&プランニンググループシニアマネージャー)。

 海外展開に当たって同社は2013年3月、インスマートシステムに「求車情報」機能を新たに追加。中古車販売事業者があらかじめ欲しい中古車の車種、年式、色などを登録しておくと、他の買取店がそれに合致する中古車を査定した際に、中古車販売事業者はその情報を瞬時に把握できる。

 現在、海外の中古車販売事業者のほとんどが、日本の中古車オークションや中古車輸出代理業者を介して、日本の中古車を購入している。「海外の中古車販売事業者は、オークションや中古車輸出代理に高額な手数料を支払っている。金額は言えないが、インスマートシステムを利用してもらえれば、それらよりも相当に安い手数料で日本の中古車を入手できるようにする」(同社の安達憲男コーポレートマネジメント&プランニンググループシニアマネージャー)。

 「インスマートシステムの利用者として加盟してもらえれば、これまでよりも安く日本の中古車を買うことができる」。こうカーセブンは海外の中古車販売事業者にアピールしている。現在の交渉相手は、ニュージーランド、マレーシア、シンガポール、ミャンマー、ケニアで展示場を持っている中古車販売会社である。まだ成約した案件はないようだが、「いずれも興味をもってくれている」と安達シニアマネージャーは言う。

 スマホを武器に海外事業に乗り出すカーセブン。中古車査定業務の合理化だけでなく、本業強化につなげることができるかどうか。ITで経営を強化するケーススタディーとして注目に値する。