アサヒビールは、飲食店向けの営業担当者約270人にタブレット端末「iPad」を貸与。商談や社外での業務処理に活用させている。2012年4月から東京の営業担当者120人が活用していたが、9月以降、大阪、名古屋にも拡大し、10月に配布を完了した。先行した東京では、利用者の9割以上が空き時間の情報参照に活用し、3割以上が直行直帰勤務の回数を増やすなど、ワークスタイルを変える成果が出始めている。

 料飲店向け営業では、訪問件数とシェアが比例する関係にある。同社では以前から訪問にかける時間を増やすため、オフィスに立ち寄らない直行直帰型のワークスタイルを推奨してきた。既にiPadを導入した東京の拠点では、「以前より直行直帰が増加した」とする営業担当者が3割を超え、手応えを得た。

 iPadでファイル共有のクラウドサービスにアクセスし、提案書やマニュアル、カタログなどの資料を閲覧できるようにしている。動画のコンテンツも社員が企画。ビールサーバーの使い方などを映像で分かりやすく示す。iPadの展開プロジェクトを担当する営業統括本部営業戦略部の田口博幸担当部長は「動画での提案効果は大きく、いろいろな成功事例が生まれている」と話す。伊藤忠テクノソリューションが提供する情報作成アプリ「BizCube」を利用して、社員がコンテンツを作成している。またiPad専用のポータルサイトも設置し、得意先情報や営業日報のデータベースにアクセスできる。

 こうした環境整備が後押しして、直行直帰で仕事をする営業担当者が増えたほか、9割以上の社員が商談の合間の空き時間を情報検索に利用。仕事の効率化が進んだと見ている。ただし得意先情報データベース検索では、従来どおりの内勤のスタッフに電話をかけて社内システムでの検索を依頼する営業担当者もいる。田口担当部長は「内勤社員の業務を効率化するため、iPadでの検索のやり方をアピールし、自力でデータベースを使う営業担当者を増やしたい」とする。

 各アプリの利用状況の情報を収集し、よく使われるアプリを把握している。またセキュリティーのため、iPadにはデータを残さないポリシーを徹底。BizCubeのデータは5日ごとに自動消去する。