鳴海製陶の福井俊成執行役員マーケティング部門長兼調達部門長兼商品開発部長(写真右)と小松孝治e-NARUMI.comお客様コミュニケーションセンターグループ長
鳴海製陶の福井俊成執行役員マーケティング部門長兼調達部門長兼商品開発部長(写真右)と小松孝治e-NARUMI.comお客様コミュニケーションセンターグループ長
[画像のクリックで拡大表示]

 「ナルミ」ブランドなどの洋食器を手がける鳴海製陶(名古屋市)が、メールを活用した販促策で成果を上げている。自社運営するオンラインショップ「e-NARUMI.com」の顧客に、ウェブサイトでのリピート購入を促すメールを段階的に配信。2012年1~6月の6カ月間に実施したところ、広告費を増やさずに対象顧客のリピート購入率が20%上昇した。この成果を確認した同社は、11月20日にサイトをリニューアルしたのに合わせて、さらに改良を加えたメール販促策の準備を進めている。

 鳴海製陶が成果を上げた段階的なメール配信の流れはこうだ。商品を購入した顧客に対し、まず購入日の翌日にお礼のメールを配信する。続いて購入から8日目に、サイト内の人気商品の特徴を紹介するメールを、さらに23日目には購入商品の感想などを尋ねるアンケートのメールをそれぞれ送る。

 こうした“追加メール”を配信することにしたのは、「商品を購入した翌日に、さらに追加で購入する顧客が多い」(e-NARUMI.comお客様コミュニケーションセンターの小松孝治グループ長)ため。例えばギフト需要で商品を購入した後、自分でも利用したくなったといった状況がうかがえる。そこで翌日に同社のサイトを印象づけるメールを配信し、関心をつなぎ止める。その後も押しつけにならない範囲・期間でメールを送ることによって、顧客が商品を買いたくなる気持ちを少しずつ高めていくわけだ。

 こうした施策を導き出したきっかけは、同社が利用するシナジーマーケティング(大阪市)のCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)ツールを駆使して顧客の購買サイクルを分析したこと。鳴海製陶は会員登録した顧客の購買動向のほか、サイト上でどの商品のリンクをクリックしたかどうかといった振る舞いまで同一のIDでひも付けており、様々な顧客行動を分析できるようにしている。こうした蓄積を生かし、顧客の購買サイクルを探ったところ、翌日に購入する顧客の存在に気付いたのである。

再購入の促進でサイトを新しい販路に

 鳴海製陶はオンラインショップに約4万人の顧客会員を抱えており、これらの顧客会員にリピート購入を促すことが課題だった。多くの顧客が1回購入しただけにとどまっていたからだ。これまでは会員を増やすことで売上高を伸ばしてきたものの、システムへの先行投資や新規顧客を獲得するための費用がかさみ、サイト単体の損益は赤字だった。2013年にオンラインショップ事業を黒字化する計画を立てている同社にとって、より効率的な販促策、つまり既存会員のリピート購入の促進が求められていた。

 実際、同社にとってオンラインショップは重要性を増している。国内市場では百貨店が主力の販路だが、「多くの百貨店の業績が悪化し、とりわけリビング関連の売り場は縮小傾向にある。さらにいわゆるライフスタイルショップの広がりなどによって競合企業も増えており、そのままでは売り上げが落ちていくばかり」(福井俊成執行役員マーケティング部門長兼調達部門長兼商品開発部長)という苦境にある。ネット事業が国内市場での売り上げ規模を維持するうえで欠かせなくなっているのだ。