乃村工藝社は、会社支給のタブレットと私物スマートフォン・携帯電話によるBYOD(私物デバイス活用)という2つの形態でスマートデバイスを活用している。同社のユニークなところは、タブレットの利用を希望する社員に「タブレットをどう使い、どのような効果が得られるか」という予想投資効果のレポートを提案してもらい、選考して支給したことだ。利用意欲の高い社員にまず利用してもらい、確かに効果が得られることを確認した後、本格導入に踏み切った。

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写真●乃村工藝社は会社支給でiPadを導入(左)、スマートフォン、携帯電話ではBYOD(私物デバイス活用)を進める

“黙認”から“先取り”へ

 乃村工藝社は、博物館やイベント、商業施設などの展示やディスプレイの企画・デザイン、施工を手がける企業。最近ではスカイツリーに隣接する商業施設のソラマチや、新東名高速道路の全サービスエリアおよびパーキングエリア、お台場DIVER-Cityの実物大ガンダムなどが同社の手になるものだ。

 同社がスマートデバイス活用に踏み切ったのは「“利用の黙認”から、積極活用して効果を“先取り”し、『ITによるワークスタイルの変革』を実現するため」(乃村工藝社 経営企画本部 グループ経営推進部 情報システム課課長 石松昇氏)だ。実際にスマートデバイスで移動のスキマ時間を活用することなどにより、休日出勤や残業時間の減少などの効果が得られている。

スマートデバイス導入前の不安

 スマートデバイスの導入にあたって不安に感じていたのは、どのように活用されるのか、そのシーンが見えず、導入効果を定量的に示せないのではないかという点だった。端末が紛失や盗難にあうおそれ、マルウェアに感染する心配なども懸念だった。

写真●乃村工藝社 経営企画本部 グループ経営推進部 情報システム課課長 石松昇氏(右)、同社の情報システム子会社 シーズ・スリー マネージャー 岡本宏明氏(左)
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 そこで同社は2011年9月、実証実験としてまず100人にiPadを支給した。その際にiPad利用を希望する従業員に「どのように活用するか」「その際に予想される投資効果は何か」をレポートとして提出してもらった。レポートを課すという面倒な募集にもかかわらず、100台の枠に、個人、部課、プロジェクト含め313件もの応募があった。