2012年10月開催の「湘南ひらつかテクノフェア2012」で説明する聖恒トランスネットワークの山田裕社長
2012年10月開催の「湘南ひらつかテクノフェア2012」で説明する聖恒トランスネットワークの山田裕社長
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開発を担った物流システム課開発グループの小山亨氏。山田裕社長の要望をシステムに盛り込む役割を担った。
開発を担った物流システム課開発グループの小山亨氏。山田裕社長の要望をシステムに盛り込む役割を担った。
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パソコン側の運行管理画面例
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タブレット端末の画面例
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 神奈川県平塚市に本社機能を置く中小運送会社の「聖亘(せいこう)トランスネットワーク」は、アンドロイド版タブレット端末とクラウドを活用した運行管理支援システムを独自開発した。車両の位置管理だけでなく、タブレット端末のGPS機能を通じて1分ごとにトラックの位置を取得し、配送の予定時間を表示。同社では、配車ルートの最適化でトラック走行距離の短縮や排出される二酸化炭素ガスも削減。労務の省力化や燃料費削減など10%のコスト削減効果があったという。

大手運送会社から「うちも取り入れたい」

 従来の自動配車システムは、運送の効率を上げるため荷物のデータをもとに積載率を上げる仕組み。だが、同社のシステムは運送会社の配車担当者が培ってきた職人技を活かしながら効率化できるのが特徴だ。2012年9月に東京で開催された「国際物流総合展2012」では、大手物流会社のシステム担当者から「なぜ今までうちでこれを作らなかったのか」や「ぜひうちのシステムに取り入れたい」という声が相次ぎ寄せられたという。

 聖亘トランスネットワークは2003年に創業し、現在25台ほどのトラック車両を保有。自動車部品やインキ・塗料、化学薬品関係など、厳密な配送時間を求める企業の運送を担う。創業時からGPS機能を活用して顧客に情報提供するなど、ITを積極的に活用してきた。2010年2月から独自の運行支援システムの開発に乗り出し、2012年4月から現バージョンの外部への販売も始めた。

 当初は外部のシステム開発会社に委託して、専用カーナビ端末を利用するシステムの開発を始めた。ところが運送業界の用語や仕組みをシステム開発会社に説明して成果を得るまでに時間がかかった。そこで大手IT関連会社でのSE経験を買われてシステム開発会社とやりとりを担っていた物流システム課開発グループの小山亨氏らが、自ら開発を始めたいと直訴。新たにプログラマーらを採用して独自開発を始めた。システムに組み込む予定だった専用カーナビが販売中止となったため、登場したばかりのアンドロイド版タブレット端末を活用する方針に転換。機能が向上してきた「Google Maps API」を組み込んで、開発を加速させたという。

運送会社のノウハウ生かし、配車担当者の「職人技」をサポート

 同社が開発した運行管理支援システム「トランスサポーター(Transporter/ST-Navi)」は、「配車担当者の職人技をサポートする」というコンセプトで開発。例えば、熟練ドライバーなら多めの荷物でも時間通りに運べるが、逆に新人ドライバーは技術が未熟で危険といった判断が必要な場面が多い。こうした中小運送会社の実情を反映しやすくした。

 同システムでは、納品先の住所や荷物に緯度と経度の情報を持たせてあり、配車担当者が地図を網掛けでエリアを選択して一斉配車の画面ボタンを押せば配車指示ができる。車両からの最短経路も指令する。運送業者に課される法令に基づいて、もし連続運転時間が4時間以上となったり積載重量が超過していたりすれば警告が表示され、配車担当者の判断で別の車両に配分できる。

 ドライバーは毎朝の乗車前の始業点検の際にタブレット端末で、前日に用意された配車情報を受信。複数の立ち寄り先を結ぶ最短経路が算出され、配送車両が動くと実際の運送状況や荷台の積載量がタブレット端末と本社のパソコン画面に表示。複数の立ち寄り先の到着予定時間が順番に赤文字で示され、タッチパネルで作業完了を操作すると表示が青文字に変わる。こうした情報をNTTドコモの3G回線やクラウドを通じて本社でも共有。車両の位置情報を1分ごとに取得し、遅れがあれば分単位で計画との差異が確認できる。運送業に必要な帳票類の発行機能もある。