プルデンシャル生命保険(東京都千代田区)は、支社の管理職を対象に2年間のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を導入した。2011年から、支社で契約管理やコンプライアンスなどを担当する「オフィス・マネージャー(OM)」を外部から採用するにあたり、最長2年のOJT期間を設け、本社のコンプライアンス部門や、複数支社での業務を経験させる。正式着任までに仕事の習熟度を高め、営業担当者に対しコンプライアンスの指導ができるようにするのが狙い。即戦力を期待される中途社員の教育に長期間を費やすのは珍しい。

 

 同社は「ライフプランナー(LP)」と呼ばれる営業担当者が、顧客固有のニーズに沿ったオーダーメードの保険を販売することで知られる。OMはLPをサポートし、契約書類などの管理のほか、総務やコンプライアンス業務を担当する。特に2007年の金融商品取引法の施行で、勧誘や説明などの規制が厳しくなってからは、、商品乗り換えを勧誘したり、顧客への説明漏れが生じていないかなどをチェックするのも、重要な業務となっている。

 

 従来は支社事務部門で経験を積んだスタッフが試験を経てOMに昇格していたが、支社の増加などによって内部昇格だけでは人材を供給しきれなくなった。そのため、2008年から中途採用を本格的にスタートさせた。それ以前も中途採用を行っていたが、仕事の難しさから定着率は芳しくなかった。「LPに迎合せず、コンプライアンスの観点から必要な時にはノーと言わなければいけない。組織がフラットなので、『本社からの指示に従え』と押さえつけてもLPを納得させられない。OMには信念を持って話し、LPを動かす力が求められる」。支社スタッフコンサルタントチームの福田哲朗マネージャーはこう説明する。

 

 そこで2011年から、OMとして中途採用した社員に、最大2年の研修期間を設けた。特に、入社前に管理職としての経験が無い社員に対しては、1年間本社のコンプライアンス部門でのOJTを経験させる。内容は、LPが提出する契約申し込みなどの書類をコンプライアンスの視点でチェックすること。また支社が実施する自主監査が正しく行われているかを現地でヒアリングする業務も経験する。法律の改正などに沿って社内ルールを新設、変更し、支社に伝えるなどの役割も担う。「書類を見たときに、書面の裏にある背景を読み取るためのアンテナを高くすることが必要。本社には全支社から書類が集まってくるので、様々なケースを学べる」(福田マネージャー)。

 

 これに加えて、複数の支社で事務処理やOM補佐として約1年のOJTを経験する。これは入社以前に管理職経験のある社員も同様だ。支社内の書類チェックのほか、LPへのコンプライアンス教育も担当する。2011年に入社し、現在高崎支社のOMを務める石村透氏は、「支社長によってコンプライアンス教育に対する方針が異なるので、様々なパターンを知れて良かった」と話す。例えばLPがコンプライアンスの判断をするたびに、OMによるサポートを求める支社もあれば、LPがマニュアルなどを見ながら主体的に判断したうえで、OMがチェックする体制を採る支社もあるといった具合だ。

 

 最大2年のOJTによって、業務に精通し、交渉力を備えたOMを支社に送り出す。コンプライアンスの強化はもとより、OMの定着率向上も目指す。