情報システム部の岡利男部長(左)、店舗モデル構築部の遠藤哲夫部長(中央)、情報システム部システム運用グループの稲木隆文氏
情報システム部の岡利男部長(左)、店舗モデル構築部の遠藤哲夫部長(中央)、情報システム部システム運用グループの稲木隆文氏
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 オートバックスセブンは2012年8月から全国の店舗530店に、接客用ツールとしてタブレット端末の導入を始めた。店員が首から提げられる、あるいは丈夫で持ち運びやすいといった利便性を重視して、画面サイズが7インチのパナソニック製業務用タブレット端末「BizPad」を採用。12年中に300店舗に1000台を導入する予定という。今後は、既存の店舗システムで使うパソコンの一部機能をタブレットに置き換えることも検討している。

 店舗で販売しているオイルフィルターやワイパーブレードなどメンテナンスで必要となる商品は、車種によって型番が多岐にわたる。車種を覚えていない来店客も少なくない。そこで既存店舗システムの機能のうち、利用頻度の高い接客業務支援のアプリケーションや、商品適合検索の機能をタブレット端末で利用できるようにした。

 同社は12年3月から顧客向けサービスを兼ねて店舗に「au」のWi-Fiサービスを導入。無線を利用したタブレット端末なら経験の浅い店員でも、その場で顧客のポイントカード会員番号から登録車両や過去の購買履歴の情報で、適合商品や販売価格を調べたり、商品在庫がなければ近隣店舗やロジスティックセンターの在庫情報や入荷のタイミングも調べられる。

 従来は、接客時に商品カタログを確認したり、売り場に顧客を待たせて支払いレジや事務所にあるパソコンを操作したりしていた。商品の適合検索システムも店舗のパソコンで利用できたものの、売り場の商品カタログを調べる方が手っ取り早いため、あまり活用されていなかった。

 タブレット端末では、適合するメンテナンス商品を、価格帯のグレード別に選びやすく見せる工夫もした。店舗の要望を踏まえて、商品情報の更新頻度も高めて、新車が登場すれば1カ月以内に情報が利用できるにするという。タブレット端末で接客サービス向上に繋げたい考えだ。

初期投資は2000万円

 現段階の初期投資は約2000万円。搭載するアプリケーションは、同社のシステム子会社が作成した既存の店舗システムの機能をアンドロイド版に改修。開発期間はテスト評価も含め約2カ月で済んだという。インフラの整備はタブレット端末を遠隔で管理するMDM(モバイルデバイス管理)などWi-Fi接続部分にとどまり、端末はリースで調達した。

 同社では従来から店舗で無線の活用を検討していた。ただ店内には盗難防止タグなど電波が多く、ノイズが入りやすい環境での導入は1店舗当たりの設備投資が100万円近くに上った。とはいえ、売り場のレイアウト変更の際は回線の引き直しが必要だ。当初はスマートフォンの導入を検討したものの、画面が小さい上に店員が個人使用しているように見える恐れもあった。そこで11年にタブレット端末の検討に切り替えた。

 今後は業務支援のメニューを順次拡大していく予定。既存の店舗システムで使うパソコンの置き換えも可能という。店舗レジと連携して見積もり書を作成する機能の搭載や、商品やピット作業を紹介するなど動画の利用、社員教育への活用も検討しているという。

 さらには、商品のバーコードをスキャンして発注や棚卸しを行うポータブルオーダーターミナル(POT)の代替も視野に入れている。現段階ではアンドロイド搭載のタブレット端末でバーコードを読むには付属品の導入コストが高い。価格が将来下がってPOTと同等の価格で導入できれば置き換えも可能になるとみている。