アールエスコンポーネンツの大辻祥子カスタマーサービスサイバーカスタマーサービスマネージャー(写真右)と木村佳代ロイヤルカスタマーサービスマネージャー
アールエスコンポーネンツの大辻祥子カスタマーサービスサイバーカスタマーサービスマネージャー(写真右)と木村佳代ロイヤルカスタマーサービスマネージャー
[画像のクリックで拡大表示]

 英国系の工業用電子部品の通信販売会社であるアールエスコンポーネンツ(横浜市)が、コールセンター部門での改善活動で成果を上げている。オペレーターの多能化を促進するなどして、掛かってきた電話に出られなかった割合(放棄呼率)を2012年4月までに4%以下に減らすことに成功した。この間、オペレーターの人数は増やしていない。大辻祥子カスタマーサービスサイバーカスタマーサービスマネージャーは「多能化が定着した成果だ」と胸を張る。

 従来、同社は顧客からの受注業務と問い合わせ対応業務とで部署を分けていたが、この組織体制では放棄呼率の高さに悩んでいた。2010年には最大20%の放棄呼率に陥った時期もあり、2011年4月も10%前後だった。同年3月に東日本大震災が発生したことで部品在庫の問い合わせなどが急増した影響があったとはいえ、目標としていた4%には遠く及ばなかった。

 そこで2011年4月、コールセンターの組織体制を改めた。一般顧客担当と、ウェブEDI(電子データ交換)など特殊な注文処理が発生する大口顧客担当と部署を分け、各部署のオペレーターは受注・問い合わせの両方を担当することにした。これにより昼時までは問い合わせ対応を担当していたオペレーターが、注文が集中しやすい夕方から受注業務を担当するといった柔軟な勤務シフトを組めるようにした。

 このように多能化を推進するとともに、誰がどの時間帯にどの業務を担当すると効率的かという勤務シフトの最適化にも取り組んだ。これらの施策が効果を上げた結果、2012年4月には目標の放棄呼率4%以下を達成した。大辻マネージャーは「震災の影響がなくなったとしても、従来の体制では7~8%で停滞していただろう」と話す。

クラウドを利用して満足度調査を実施

 多能化は業務効率の改善につながる一方で、業務範囲が増えるオペレーターに“やらされ感”をもたらす恐れもある。これを防ぐため、大辻マネージャーは社内大学制度を活用した。同制度で業務に必要なスキルを学んでもらうことはもちろん、オペレーター自身も担当業務の講師として、別の担当者へ教えるようにした。同社の社内大学制度は、従業員が多数の講義を受講したり、講師を務めたりすると、社内専用の報奨金をもらえる仕組みになっている。この仕組みによって自発性を引き出しやすくなっているのだ。

 並行して満足度調査を半年に1回実施してきた。米グーグルのクラウドサービス「Google Apps」でアンケートフォームを作成し、オペレーターに業務への満足度を10点満点方式で回答してもらっている。これにより満足度を確認するとともに、結果を踏まえつつオペレーターと他部門のマネジャーなどが面談する機会を用意した。不満を持っているオペレーターに気兼ねなく話してもらい、フォローしようという工夫である。

 調査を担当する木村佳代ロイヤルカスタマーサービスマネージャーは「多能化を推進してきた間に、業務への満足度が着実に高まってきた」と明かす。2012年7月に実施した3回目の調査では、ほとんどのオペレーターが前向きな姿勢である7~10点を選択してくれたという。

 アールエスコンポーネンツの一連の活動は社外からも高い評価を受けている。社団法人・企業情報化協会が7月に公表した「2012年度優秀コンタクトセンター表彰制度」では優秀賞を獲得した。