富士ゼロックスの「電子調達かんばん」をプリンターで印刷したもの
富士ゼロックスの「電子調達かんばん」をプリンターで印刷したもの
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 富士ゼロックスは中国と日本の2国間にまたがる部品調達において「電子かんばん」を使い、2012年7月までに在庫を従来比で約40%削減した。中国深センの子会社で生産するプリンターや複合機の部品のうち、主に日本から輸入する基幹部品などの調達に、2011年11月から電子かんばんを利用している。

 かんばんとは、後工程から前工程に情報を伝えるためのカードのこと。通常は紙でかんばんを作って現物を工程間で回すが、それをコンピュータ上で電子的にやり取りできるようにしたものが電子かんばんだ。

 富士ゼロックスの場合は、この電子かんばんを部品調達の場面に使っている。中国工場で使った分の部品の情報を、海を越えた日本などに「電子調達かんばん」を通じて伝え、こまめに補充発注している。同時に工場内に置く在庫水準の適正化を徹底したところ、これまで余分に持っていた部品在庫を減らし、約半年で40%の削減効果を上げた。

 富士ゼロックスは2010年秋から「調達かんばんシステム」を運用している。それ以前は工場ごとに別々のかんばんの仕組みを使っていたが、2010年秋までに全社で調達かんばんシステムとして統一した経緯がある。このシステムを使えば、生産台数に応じて部品ごとに最適なかんばんの枚数を算出し、部品の適正な在庫量を維持できるようになる。

 当初は国内に限って、紙のかんばんを使って運用していたが、中国の深センで利用するに当たり、2011年11月に電子調達かんばんの機能をこのシステムに追加した。

 紙のかんばんを使うか、電子かんばんを使うかは、調達かんばんシステムの画面から簡単に切り替えられる。電子かんばんを選ぶと、仕入れ先との情報共有システムを通じて、電子かんばんの情報が相手に伝わるようになっている。

 工場から仕入れ先に電子調達かんばんをネットワーク経由で飛ばした場合、受け取った仕入れ先側ではそれをプリンターで印刷し、出荷する部品の箱に貼り付ける(写真)。つまり、電子的なやり取りをしているのは、工場から部品の補充発注の情報を仕入れ先に伝える時である。

 相手が同じ国にいて、ルート便でつながっていれば、紙のかんばんを回すことができるが、国をまたぐとそうもいかなくなる。物理的な制約がある紙のかんばんは使えない。そこで電子調達かんばんが必要になった。