●上杉信久・三井生命保険お客様コミュニケーション部長
●上杉信久・三井生命保険お客様コミュニケーション部長
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 三井生命保険はお客様サービスセンターの応対担当者が話した内容をリアルタイムでテキスト化する「音声認識ソリューション」を8月下旬に導入する。担当者の業務画面に、必要な保険商品の説明事項を自動表示。担当者によって説明や確認を終えたものは画面から自動的に消えて説明漏れを防ぐ。さらには、応対者を管理するスーパーバイザーが担当者の応対内容を文字で把握しながら必要に応じて補助したり、応対品質の向上につなげたりするほか、顧客から寄せられた情報をより活用できるようにする。

 同ソリューションは、自然言語処理エンジンが前後の文脈で判断して単語を特定。話しているそばから文字にできる。アドバンスト・メディア(東京・豊島区)の音声認識技術の言語モデルとアプリケーションを基盤に、みずほ情報総研が保険業務に特化した辞書や、保険の電話応対業務の機能を付け加えた。応対者の発話は高い精度でテキスト化できるという。

 三井生命では、およそ200万件に及ぶ生命保険契約の顧客から年間20万超える電話がかかってくるという。内容の多くは、名義や住所の変更などのライフイベントの発生にともなう電話や、契約の満期更新や契約事項の説明など通知書類への問い合わせ、解約や契約見直しの申し出などという。

 このうちライフイベントの発生や契約見直しなどの顧客ニーズが顕在化するタイミングは、保険会社にとって顧客から寄せられた問題を解決するビジネスのスタートとなる重要な場面でもある。そこで同社は、単に説明漏れを防ぐだけでなく、例えば名義変更手続きにともなって住所変更が多いような場面では二度手間とならないように住所変更の説明を加えておくなど、過去の応対事例から再び問い合わせが寄せられてしまう場面を見つけ出して応対法の改善につなげていくという。

 さらに、顧客に心遣いを感じてもらえるような言葉を積極的に使えるように応対者の意識改革を促す。顧客の属性に応じて必要とされやすいタイミングや提案内容で顧客にコンタクトを取るプランの作成など戦略的な活用も視野に入れている。
 同社お客様コミュニケーション部の上杉信久部長は「これまでは手続きを迅速、正確にこなす効率化が主眼だった応対業務で、情報収集の機能を高められればビジネスフローのスタートとしてプロフィットセンターに進化していける」と期待を寄せている。

 同社は全国3カ所にあるコールセンターのうち130席に導入。初期導入コストは音声認識のパッケージのライセンス導入などで約8000万円。みずほ情報総研によると、音声認識ソリューションの導入は通信販売が主体の外資系生命保険会社を除き国内生保では初めてという。