ダイキン工業化学事業部の金子秀雄副事業部長兼営業部長
ダイキン工業化学事業部の金子秀雄副事業部長兼営業部長
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 ダイキン工業の化学事業部は2012年6月初旬、上海など中国の拠点で、ナレッジマネジメントシステムを稼働させた。主力のフッ素化学品を中心に、営業担当者が企業顧客から聞き取ったニーズをナレッジデータベースに登録。日本語に翻訳して、日本の営業部門や研究開発部門などと情報を共有する。顧客ニーズに沿った迅速な製品開発や、日中両エリアでの営業提案力向上に役立てる。

 同事業部では2010年に、ドリーム・アーツが提供するウェブデータベースの「ひびきSm@rtDB」と営業支援ツール「ひびきSALES」を導入した。営業担当者が顧客を訪問した際に、顧客のニーズを聞き取り、レポートをデータベースに登録する。当初は営業担当者同士の情報共有を主な目的としており、例えば樹脂を担当する営業担当者が「耐油性がある製品が欲しい」という顧客の声を登録すると、塗料の担当者が「対応できる」と名乗り出て、共同で訪問するといった使い方をしていた。

 月間400~500件の登録があるなか、現在では研究開発やテクニカルサポートの部門にも利用が拡大。約400人がデータベースを参照して、ニーズを満たすために必要な技術サポートや機能開発を行っている。

 ナレッジデータベースの運用においては一般的に、「情報を登録しても他のメンバーに読まれないため、登録のモチベーションが下がり活用が尻すぼみになる」という失敗パターンが指摘される。同社ではレポート読み込みを専任で担当する約10人の「目利き部隊」を設置。顧客のニーズのなかで、大きな市場につながりそうなものを重点テーマとしてピックアップし、営業担当者に集中的に提案させたり、開発部門で技術的な課題を解決したりするよう指示を出す。「事業部全体で“寄ってたかって”テーマを膨らませ、100億円規模の売り上げに結び付きそうなテーマを発掘する」と化学事業部の金子秀雄副事業部長兼営業部長は話す。既に20~50億円の売り上げに結び付いたテーマもあるという。

 今後の戦力市場と位置づける中国でも、このデータベースを活用する。150人の営業担当者がレポートを登録すると、5人の翻訳担当者が日本語化して日中両国で情報を共有、多様なニーズに対応して用途開発を行い、2015年度には中国での売り上げを1000億円に伸ばすことを狙う。